夜の熱気の中で     ジョン・ポール

ハヤカワ・ポケット・ミステリー  IN THE HEAT OF THE NIGHT  菊池 光 訳

アメリカ南部、人種偏見の激しいウエルズという小さな町。警察官サム・ウッドはある暑い夜、巡回中に路上に撲殺されて死んでいる男を発見したが、この男、町振興のために開く音楽会で指揮を執る予定で、イタリアからやってきたマントリ。
駆けつけた所長の命令で付近を調査した結果、駅構内で列車を待っていた黒人を逮捕した。
ところがこれがカリフォルニア・パサデイナの犯罪捜査官ヴァージル・テイップス。
町の有力者からの依頼で所長の嫌う黒人の彼が、捜査の指揮を取ることになってしまった。
容疑者は、マントリの財布を持っていたオバーストという若者、ドライブインのボーイ、ラルフが言う、たまたまそこをとおりかかった原子力関係の技術者、マントリの協力者カウフマン、そして最期には露出狂の娘デロリスから訴えられたサム・ウッド自身にもおよぶがテイップスは次々に反証をあげて消して行く。
実はラルフはデロリスと関係したが、デロリスに妊娠したらしいと言われて金が必要になった。
そこでたまたま行き会わせた、金のありそうなマントリを誘い、教会裏で撲殺し、証拠隠滅のため、死体を現場に放置したものだった。
この作品は、優秀な大学出の紳士である黒人捜査官の主人公テイップスが、人種偏見の激しい南部の町で、さまざまな障害を乗り越えて、事件を解決して行く過程に魅力がある。
南部の田舎町の様子も、貧困白人層たるラルフ、デロリスの父、暴漢等の反発等を通してよく描かれている。
テイップスの解決方法は、作者がホームズ・ファンだったという事もあり、極めて緻密で論理的。
死体の状況からよそで殺されて運ばれてきた、犯人は道路に死体を放置したのだから、その時間の交通状況を良く知っていたはず、傷口から犯人は右利き、付着物から凶器は松の木の枝、などとする下りである。
一読を他人に勧めたくなる小説の一つである。