ハヤカワ・ポケット・ミステリ THE JUDAS WINDOW 砧 一郎 訳
メアリー・ヒュームと結婚することを約束したジェイムズ・アンズウエルはメアリーの父で財産家のエイヴォリー・ヒュームに会うべく、ロンドン郊外の屋敷を訪問する。ところが案に相違して、妙に冷たい出迎えである。応接に通され、エイヴォリーに対面すると、結婚は承知の様子だったが、だされたウイスキー・ソーダを飲むと、気を失う。
しばらくして気がつくと、エイヴォリーが壁に掛けてあった矢を胸に深く刺されて死んでいた。しかもドアにはさし込みボルトがかかっていた。
ジェイムズはエイヴォリー殺しで訴えられ、裁判になるが、被告側弁護士にはヘンリー・メリヴェール郷がつく。
ここから先、裁判の進行に従って物語が進む法廷物の典型。この事件には二つの思惑が重なっていた。ジェイムズの弟のレジナンド・アンズウエルは文無しの新聞記者だが、昔メアリーと関係があった。兄がメアリーと結婚すると聞き、口止め料をエイヴォリーから強請取ろうとした。怒ったエイヴォリーは、アンズウエル家に精神病の系統があるのを良いことに、気を失わせ、あらぬ発言をさせ、弟の医師スペンサー・ヒュームの到来を待って、精神病院にかつぎ込もうと考えた。到着したのは、娘の婚約者のジェイムズだったが、面識がなかったので間違えたという訳だ。
一方で財産をメアリー夫婦に譲ることにしたが、一生彼に仕え、財産をの一部をもらうことになっていた秘書兼家政婦のアメリア・ジョーダンが激怒した。
彼女はジェイムズが昏倒した後、部屋に入り、証拠を持ち去ったのち、スペンサーが来たら連絡するから、さし込みボルトをおろして待つように、依頼したのち、部屋を出る。
あらかじめ糸をつけ、分解しておいたドアのノブを応接室に押し込む。エイヴォリーが、なんだろうと心棒の抜けた2分の1インチ角の穴をのぞいた瞬間、部屋の外から石弓につがえた矢を撃ったものだった。
トリックについては畦上道雄の「推理小説を科学する」に詳しい。
また法廷物として良くまとまっている様に思う。
しかし、動機の説明が不十分な感じがし、あわせてアメリアが部屋を出る時、さし込みボルトをおろして待つように依頼したというところが不自然な感じがした。
・薬物は、スコポラミンの誘導体の<プルデイン>という、私たちが病院で実験していた半麻酔剤なのだ。(137p)
・ウイスキーのにおいを消すために、薄荷エキスをそそぎ込んだ時に・・・・(137p)
・海に臨んだ高い塔の頂上の部屋で・・・胸を散弾銃で撃たれて死んでいましたが・・・誰が殺したのか?。凶器はどうなったのか?。
・・・・自殺だったんです。
散弾銃を窓の淵に乗せて、銃口から数フィートのところにたち、釣り竿で、銃の触発引き金に触れたんです。銃は発射の反動で、窓から海に落ちてしまいました。(211p)
* 密室犯罪
* スコポラミン
「畦上道雄:推理小説を科学する」より