五芒星桔梗の寺殺人事件        和久 峻三


徳間文庫

柊こと赤かぶ検事が活躍する。
渡辺綱が美女に化けた鬼の片腕を切り落としたと伝えられる一条戻橋。そのふもとで若い男の絞殺死体が発見された。被害者は老舗「櫟本呉服店」の御曹司櫟本宗太郎と断定された。右手には一輪の桔梗の花を握り、内ポケットには「晴明桔梗」の紋をあしらった護符が入っていた。ところがカメラマン藤木泰子は、宗太郎の葬儀のわずか二時間後に、桔梗で有名な東福寺塔中天得院と相国寺塔中大光明寺の二ヶ所で宗太郎を見かけたと証言した。さっそく赤かぶ検事は接触をはかるが、その矢先藤木は浄瑠璃寺近くの薮の中で絞殺死体となっていた。やはり手には一輪の桔梗の花を握り締めていた!
行天燎子警部補の活躍で櫟本家の内情が分かった。同家は、櫟本誠之助が亡くなったあと、未亡人の千代乃が中心になっている。子は宗太郎と由樹子、由樹子は小野秀夫と結婚している。宗太郎はお茶屋あそびにうつつをぬかしているが、秀夫は仕事熱心でこちらが店を相続してもおかしくはない。赤埴祐二という大番頭がおり、実質的に店を切り盛りしている。桔梗の出所から宗太郎が通っていた陰陽師東雲通済も事件に関係しているらしい。
宗太郎が死後目撃された、という証言から捜査が進展した。昔誠之助は、お茶屋の女春香の手を出し、一卵性双生児が生れた。春香を櫟本呉服店従業員北村軍治に嫁がせ、一人をその子として、もう一人を櫟本家長男として引き取った、というのだ。そして一条戻橋で発見された死体は、宗太郎ではなく北村に引き取られた日出男であることが分かった。ところが今度は、本物の宗太郎の死体が東雲通済の屋敷側で発見された。捜査は核心に迫ってきたのだが、遺産相続がらみなのか、お家大事なのか、後一歩が分からない!

老舗の呉服店、桔梗の寺、陰陽道などを絡ませたところがこの作品の魅力と言えようか。最初の二つの殺人は絞殺だが索状痕が残っていない。実は麻酔性があるが痕が残らないエーテルを嗅がせ、巾の広い紐で締めたという。推理としてはその辺が面白いが、後は大体大胆な推理と自白などで解決されている。
010315