ゼロの焦点    松本清張

新潮文庫

 板根禎子は、広告会社代理店の鵜原憲一と、見合い結婚をした。しかし、1週間後、仕事の引継に金沢に行った夫が、失踪してしまう。禎子、広告会社の本多、憲一の兄の宗太郎等が調査にあたる。
 その結果、憲一が、金沢にいた頃 室田と言う耐火煉瓦会社の社長に世話になっていたことがわかる。宗太郎は、何か事情を知っている様子だったが、鶴来という山の旅館で毒を盛られて死ぬ。
 ようやく手がかりをつかんだとき、憲一は自殺として処理されており、その金沢での姓は曽根で、室田耐火煉瓦会社の工員と言うことになっていた。次々に、明らかになる夫の陰の生活!
 むかし、曽根が立川で刑事をやっていたおり、パンパンを取り締まる係りだったことから、会社の田沼久子に疑いがかかる。しかし、それを追求していた本多が毒殺され、さらに久子が、憲一と同じ場所で飛び降り自殺をする。
 一時は、事件を操った陰の男は、室田社長と考えた禎子だったが、このストーリーは、今は金沢の名士となった室田夫人にも当てはまった。失踪した室田夫妻を追った禎子が見たものは、日本海の夕暮れ迫る荒海に小舟をこぎだす室田夫人と、それを悲しげに見送る室田氏の姿だった。

 謎解きという点では普通と思うが、占領された日本の問題点を指摘した点、物語としての面白さは大したものだと思う。


気のついた知識
・飛び降り自殺がなぜ自殺と見られたか。    P264
「遺書があったんです。それから、本人が投身したと思われる場所、つまり断崖の上には当人の靴がキチンと揃えられ、それから手帳が置いてあり、それには今言った遺書が挟まれて靴の上に乗っていたのです。これは誰が見ても覚悟の自殺ですね。」
・本籍分明届 P260
死亡したがどうしても本人の原籍地がわからない場合、あとで本籍地がわかった時に届けてもらうと言う条件でこの届けを出してもらい、埋葬許可証を発行する。
・鵜原から曽根へのいれかわり P310
クリーニング屋が、二つの洋服の交換所になっていた。