二度のお別れ 黒川 博行


文春文庫

大阪の三協銀行にピストル強盗が押し入り、400万円近くを奪ったが、その際融資の依頼に来ていた自動車修理会社社長の飛び掛かった。社長は撃たれ、犯人に人質として誘拐される。ところが犯人から「社長を返してほしければ1億円出せ。」の脅迫状、小指まで送られてくる。社長の妻の要請で銀行はしぶしぶ1億円を融資、犯人の要求で金は妻が運ぶ。警官の見守る中、不審なマンホールにしゃがみこむ妻、いつのまにか現金入りトランクは偽物とすり替えられていた。やがて山中にうめられた社長の死体発見・・・・。事件は迷宮入りになるのだが、マメちゃんこと亀田刑事ひとりが狂言強盗ではと疑っていた。
それから3年、黒田刑事ことクロチャンに死んだはずの社長から電話。銀行強盗はドヤ街で拾った浮浪者と二人でやった、金に困っていたからだ、私の指やら、死体やらがでたが、あれはすべて浮浪者のもの、妻が共犯でそれらを私のものと証言したから成立した話しだと種明かし。しかし逃亡生活に耐えられなくなった妻が自殺したから自分も後を追う・・・・。

あとがきに作者の感想がある。
「小説はもちろん、まとまった文章を書くなど初めてであるだけに、行きつ戻りつ、何度も書き直し、非常に苦しく、ほんの少し楽しい経験をしました。」
初めて書く推理小説のお手本という点で非常に参考になった。単純明快なプロット、結構緻密な論理、無駄な事は書かない、登場人物が少ないなど・・・。全体警察物という書きぶりで大阪式ギャグも豊富、クロマメコンビに無能な神谷部長、責任回避を謀る村橋係長などの動きがからみ、それなりに面白い。ただ、狂言強盗であろうことは最初の書きぶりで簡単に推定される。

・切断面の凝血状態、細胞組織の出血状態、酵素活性(アルカリフォスターゼ反応)から、死後切断されたものか、生きているときに切断されたものかは100%わかる。(35p、163p)