講談社文庫
ことしも推理作家有栖川有栖と臨床犯罪学者火村英生は、北軽井沢にある推理作家の権威真壁聖一宅クリスマスパーテイに招かれた。同宅には聖一の妹佐智子、その娘真帆、七年前聖一が火災に遭い、九死に一生を得たが、その時命を落とした消防士の息子桧垣光司が住んでいる。有栖等と共に滞在することになったのは推理作家高橋風子、石町慶太、編集者の杉井陽二、船沢辰彦、安永彩子である。
小川の木立の向こうに、右頬から首筋にかけて火傷ににた赤黒い跡のある怪しげな男。年齢は六十を過ぎているように見えるがなぜ現れたのか。
パーテイも終わった頃、彼らは屋敷にとんでもないいたずらが施されていることに気づいた。階段に石灰が撒かれ、ドアにはXの文字、窓にハートの落書き、クロゼットの靴にワイン、部屋中にトイレットペーパー、ナイトテーブルに偽時限爆弾入りぬいぐるみ、ベッドに盲人用の杖、まさに推理小説で言うミッシング・リングで互いに関係なさそう。
午前3時頃、雪の上に妙な足跡を見つけた有栖は部屋を見て回ることにした。最後に真壁聖一の部屋、肉の焼けるおぞましい臭いがし、部屋に踏み込むと何か鈍くて重いものが振り下ろされ、気を失った。気がつくとラウンジで石町が私をのぞき込んでいた。火村も呼んで聖一の部屋にもどると掛け金がおりており、打ち破ってはいると、暖炉に見知らぬ男が首を突っ込んで焦げていた!そして殴殺された跡!
皆起きてきたが、真壁聖一がいない。探し回ると聖一氏は掛け金のかけられた地下室で同じような形で殺されていた。まもなく凶器の壷や石油缶が発見される。見知らぬ男の素性が明らかになり、セロテープとテグスを使った密室作成プロセスもクリアーにされる。動機も出席者間の恋愛、嫉妬、火事の復讐説などいろいろでてくる。しかしみずからのアリバイ証明のために、犯人が撒いた石灰の上に残された足跡から、事件がほぐれて行く。
煙突の上から、被害者を暖炉の下に誘い込み、テグスに吊るした壷を落として殴殺するというトリックが面白い。壷はテグスを引いて回収する。犯人はさらに石油をかけて、同じくテグスで吊るした発火源により着火させ、死体を焼いてしまう。
作者の作品を読むのは4作目である。作者は作品ごとにテーマを選んでいるように見える。また本格派であるから孤島型作品が目立つ。
孤島パズル=モアイ像によるジグソーパズルによる財宝探し、ダイイングメッセージ、自殺と見せかけた他殺等がテーマ。舞台は三日月型の孤島
双頭の悪魔=複雑に絡み合った交換殺人。舞台は川を挟んだ孤立した山村
ダリの繭=殺害を計画した男が返り討ちにあったため、事件解明が困難になるというテーマ。現代の繭フロートカプセルが魅力
本作品=ずばり密室。なんとなくこの手法はカーター・デイクスンの「プレーグ・コートの殺人」(煙突から岩塩の弾を用いた消音銃で殺害)とチェスタトンの「ムーン・クレサントの奇跡」あるいは樹下太郎の「「期待」と名づける」を組み合わせたような手法と感じた。舞台は孤立した山荘。
・西村寿行「血の翳り」(13p)
・犯罪家系の研究「ジューク家の研究」(15p)
・ エラリー・クイーン「最後の一撃」「九尾の狐」(113p)
・ ロックド・ルーム・マーダーズ=1991 Crossover Press(349p)
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