集英社文庫
榎本武揚率いる五稜郭が陥落し、戊申戦争は終わりを告げた。しかしここに「降伏はせぬ!」と城を抜け出した凄腕の狙撃兵二人、蘇武源次郎と名木野勇作。銃を手に馬に乗り奥地へと安住の場所を求めて、西部劇さながらの脱出行が始まる。これに鹿を獲っていたアイヌの少年シンルケが加わる。
二人は、シンルケから、請負地や直轄地の和人のアイヌに対するひどい行為を聞き、義憤にかられる。交易所に鹿皮を売りにいったおりに争いになり、帳役と討伐の兵士3人を撃ち殺してしまった。開拓使を送って北海道を開拓しようとしていた朝廷軍はこれに激怒、隅倉兵馬、荒巻久平等8名を討伐軍として派遣する。
娘を助けたことから隠れキリシタン部落に落ちついた後、3人はさらに西に向かう。隅倉一行がキリシタン村を襲う、函館に直訴に行こうとする僧の一行を皆殺しにするなど蛮行をくり返しながらこの後を追う。やがて3人にアイヌと和人の混血の娘ヤエコエリカが加わる。そしてシンルケとヤエコエリカの薄幸の恋。しかしシンルケも蘇武源次郎も追っ手の隅倉等との戦闘中に死んでしまう。
国後島を目前に見る、風蓮湖近くの小屋に立てこもった名木野勇作に、いまは4人になってしまった追っ手がせまる。いよいよ最後と考えた勇作は隅倉との一騎打ちを呼びかけるが・・・・。
解説にある通り、まぎれもなく西部劇である。格好良く、ロマンがあり、それなりには面白いのだが、人間の悩みを描く、と言う点ではいま一歩物足りなさを感じた。船戸与一の「蝦夷地別件」と読み比べて見ると面白い。
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