創元推理文庫
7つの密室推理短編集。マニア好みの作品で、そのようなことが現実におこりうるか、いなか、という考えはここでは捨てた方がよい。推理小説本来のおもしろさを志向し一種のパズルと考えるべきである。白岡警察署の黒崎警部が解決するが、ちょっとポーターの「ドーヴァー警部」を思わせ、抜けたところが面白い。
密室の王者
ロナルド・A・ノックスの「密室の王者」のパロデイ。
密室の体育館をあけると、数人の男が酔いつぶれており、その下に白岡町の相撲チャンピオン時任健一が何かに激突したような死に方をしていた。種明かしは、時任は自殺を希望し、みんなに胴上げをしてもらった後、落としてもらった、みんなは悲しんでその後酒を飲み、酔いつぶれたもの。英語のタイトルNO
SMOKING IN THE LOCKED ROOMがしゃれている。
デイクスン・カーを読んだ男たち
数年ぶりに外国から帰った姪が、叔父の書斎に入ろうとするが、鍵がなく入れない。警察立ち会いの元に、壊して中に入ると叔父と義理の兄の白骨化した死体、そばに書斎の鍵。実は二人を嫌い、叔父の財産だけがほしかった姪が、叔父に癌だ、と言い聞かせ、義理の兄との間に遺産に関する争いを起こさせた。義理の兄が、叔父を殺したが、一瞬早く、唯一の鍵を叔父が飲み込んでしまったため、義理の兄は餓死してしまった。
作者のデイクスン・カー好みがよくでている作品。私には引用されている作品のほとんどが目新しかった。起承転結の4章にわけ、告白形式にしているのもおもしろい。
やくざな密室
暴力団山田組は対抗する三和組をたたくためにロケット砲を購入。三和組は核シェルターを買い、会長はその中に隠れる。ロケット砲がぶち当たる。ドアを開けると会長が死んでいた。実は三和組副会長の村田が山田組のスパイで、換気扇を閉じておいたため、会長は酸欠で死んでしまったのだ。
懐かしい密室
3人雑誌社編集員が外で待つ密室で、作家は書き続けているはずだが、どうも様子がおかしい。4番目にきた宮本という編集員の助言で、ドアを打ち破って入ると作家は消失。実は(1)3人がドアを押すと、宮本の服装をした作家は掛けがねをはずし、3人を中に倒れ込ませ、自分は外にでて行く。(2)3人に続いて本物の宮本が入ってくる。
2年後再び編集員たちが押し掛けると、作家の首が書斎の机の上に・・・。これも、同じようなトリックだが省略。
脇本陣殺人事件
横溝正史の「本陣殺人事件」のパステイーシュ。
借金のかたに一本柳家令嬢は不動産屋の宮地と結婚し、初夜の晩を離れの部屋で過ごす。ところが翌日令嬢は消え、目張りした密室の中に宮地の死体。当日は雪の降る寒い日、電気ストーブをつけっぱなしにしていた。令嬢は宮地がいやで逃げ出し、町のホテルに泊まった。残された宮地は、部屋に目張りをして、冷えるのを防いだが、誰かがストーブの電源を切ったため、心臓麻痺を起こして死んでしまった。殺人を偶然に頼っているところがちょっと物足りない。
不透明な密室
細田組は清川組に仕事をとられて怒り心頭。ところが清川組長がテラスしか出口のない密室で刃物で刺されて殺された。近くを細田会長が様子をうかがっていたが、殺害現場まで30メートル。実は当日は終戦記念日で、皆が黙祷を捧げている間に、テラスに忍び込みブスリ・・・。ちょっと荒唐無稽。
天外消失事件
ロープウエイリフトの山麓口。降りてくるリフトをあけると女の死体。ところが登り客が男とその女が争うところをみたという。男はどこに消えたのか。実は男を挟んで愛人と妻が争ったが、愛人が刺され、あわててリフトに飛び乗り、中で絶命。夫婦はそれを追って飛び乗ったが、責任のなすりあいで喧嘩。たまたま愛人と妻が似ていたことと、登り客からみるとリフトは次から次へ降りてくるから異なるリフトが一つに見えてしまったという。