講談社文庫
昭和51年、カメラ、OA機器メーカーリカードの開発事業部長生駒洋一郎が、昭和43年に起きた息子慎吾の誘拐事件の手記を残して死んだ。
手記によれば当時洋一郎のイコマ電子工業は技術は優秀だったものの、資金に苦しんでおり、リカードは吸収をねらっていた。自宅に発煙筒を投げ込み、母親の目をそらし、慎吾を誘拐した犯人は5000万円を金塊で要求してきた。追跡劇があった後、金塊はブイ代わりになったゴムチューブに取り付けられ、海に投げ入れられた。慎吾は無事に戻ってきたが、金塊は戻らず、その余波でイコマ電子工業はリカードに吸収された。
当時5歳だった慎吾はのちにリカードに入社し、能力が認められカナダに留学することとなった。ところが相前後してリカードの武藤社長の孫兼介が誘拐された。それもゲーム社なる小さなパソ通会社のアスカなるプログラムを楽しむうち、指令にだまされて伊豆半島の別荘に連れ込まれ監禁されてしまったのだ。
パソコンの声を用いて武藤社長の元に送られた要求は十億円、それをすべてダイヤの原石に変えよという。しかも運搬人に生駒慎吾を指定してきた。急遽、慎吾がカナダから呼び戻される。
そして叔父でもとイコマ電子工業に働いていた間宮等ととも犯人(パソコン)の指示に従い、あちらへ、こちらへ、最後は東北道から山形の研究所を経由し、蔵王のスキー場に。リフトから事前にダイヤを入れた筒を落とす。犯人から受領のサインが出され、兼介は帰される。しかし犯人は捕まらない。事件のほとぼりの冷めた頃、生駒慎吾と間宮が話し合う。昭和43年の誘拐犯とこの事件の犯人とが・・・・。
作者は後半の誘拐犯が慎吾であることをあかし、倒叙法に近い形で記述している。迫力はあるが謎が少なくなり今一歩という感じを受けた。また本人は遠方にいてパソコンの操作だけで誘拐というのは話としては面白いがちょっと無理があるように思えた。