開けっぱなしの密室      岡嶋 二人


講談社文庫

素晴らしい短編集。随所に独自のアイデアが出ているし、話の進め方も天下一品で、大いに参考になった。
罠の中の七面鳥
犯罪者たちはそれぞれの思いを胸に秘めて、それぞれの立場で作を練り、対処して行く。ならばそれらを各自の独白でつづったら面白い。
宮本は、会社の金を使い込んで困っていた。佐々木は、他人に紹介されて、夜になると変装し、麻美と言う名でホステスをやっていた。宮本が佐々木の働くクラブで麻美を発見、あまりにも会社で働く佐々木に似ていたので、彼女を誘い出して殺し、佐々木がが公金を使い込んで自殺したように見せかけようと考えた。ところが麻美は、それを見破って莫大な礼金を要求。しかし宮本は、佐々木と麻美が同一人物であることに気づく。そこで麻美をホテルで殺し、佐々木の服に着替えさせたが・・・・。
サイドシートに赤いリボン
こういう作品はどう考えるのだろう。スタントマンが自動車に当たって死んだふりをして多人を驚かすというアイデアだろうか。
若槻五郎は、奥山喜代治のマンションからでてきた女がひったくりに会うところを目撃、助けるが女は消えてしまった。そして部屋には奥山の自殺死体、女のハンドバックからは人をはねて殺したから死ぬとの遺書。ところがはねた筈の千葉浩平はかすり傷程度でぴんぴんしていた。なぜ、自殺?ミステリアスな出だしである。やがて東名で客の車を持ちだし、女の子と楽しんでいて事故、会社を首になった男が、走向の邪魔になった車に乗っていた男たちに復讐を始めていたことがわかった。スタントマンの技術を生かして車にぶつかったふりをして、運転者に人を引いた苦しみを味あわせる・・・ところが、これが奥山の自殺を引き起こした。
危険がレモンパイ
思惑と思惑が入り乱れる中、アリバイが絶対に見える男が犯人というストーリー。
屋上で映画撮影中、男が墜落死、顔はレモンパイだらけだったという出だしが面白い。レモンパイは相棒がふざけて投げたものだが、事故か他殺かが問題。ともかくもその時4階のトイレに行っていた園部は無罪と思われた。しかしこれを見ていた婆さんが証拠を発見、強請ろうとしたところから警察は証拠を握った。あらかじめ園部と墜落男は4階に受け台を作っておき、そこに飛び降りて、相棒を驚かす予定だった。ところが園部はその裏をかいて、受け台を密かに取っ払ってしまったから・・・・。
がんじがらめ
他人を殺して自殺に見せる、しかし発見者が保険金が欲しくてまた他殺に見えるように工夫をしたら、と言うところが面白い。
和彦が義兄の家に行くと、姉がベッドの上で死んでおり、ガスが漏れていた。普通ならすぐ警察に届けるところだが、彼は競馬で大損、兄に無心に来たのだった。半年前に姉は和彦が受取人の生命保険に入ったが、自殺では1年経過しないと保険金はおりない事になっている。そこで彼はこれを他殺に見せ掛けられないかと考えた。
しかし警察ではガスが漏れて一酸化中毒で死ぬまでには5、6時間かかること、あらゆる指紋がふき取られていたこと(自殺者がそんな事をするはずがない。)などから、最初から他殺と決めてかかり、義兄を疑っていた。
火をつけて、気をつけて
犯行現場を見つける。自分の目的にあった犯罪を、その犯人の能力を生かしておこさせると言う物。他にも応用出来そうだ。
放火犯を見つけた私は、彼に脅迫状を送り、叔父の所蔵している古い映画フィルムに火をつけてもらう。ニトロセルロースで出来たそのフィルムは燃焼と同時に青酸ガスを発生し、放火犯も叔父も死んでしまう。私は悠々と叔父の膨大な財産を相続出来るはずだったが・・・。
ところが放火を確実に行わせるために振り込んだ5万円が仇となった。
開けっぱなしの密室
夏美は、アパートを引っ越したが、大家が自分のいない間に部屋に入ってくる様子。捕まえてとっちめてやろうと友人の悦子を呼ぶ。ところが夏美が罠をはっている最中に、何者かに殺されてしまった。しかも閉めておいたはずのドアが開いている。鍵を持っているのは大家と夏美だけのはず・・・・そうだ、前の居住者がスペアを作っていたかもしれない。
悦子が調べると、その男貫井は、万引した女を脅すなど評判の悪い男。きっと彼がそう言う女を脅す場所に利用していたのだろうと、もう一度夏美の部屋を警察立ち会いで捜査すると、なんと床下から貫井の死体。実は階上の夫婦の女房が、万引きで捕まり、貫井に強請られ、やむを得ず殺し、夫婦で死体を夏美の部屋の床下に埋めたのだった。
通常なら貫井が、犯人としがちなところを一ひねり加えてあるところがいい。最初を女同士の手紙、結末を刑事の手紙で締めくくっているところも良い。