角川文庫
昭和10年頃の由利麟太郎、三津木俊介が活躍する短編推理小説集。猟奇的作品が多い。特に出だしは工夫しているようで、みなぎょっとするものばかりである。
悪魔の設計図
信州に静養に出かけた新聞記者三津木俊介は、宿の女中お美代の勧めで、青柳珊瑚大一座なる田舎芝居を見にゆく。ところが舞台で珊瑚の代役で出ていた花代が死体となってころがり、相手役の人気男優都筑静馬が姿を消した。そして劇場の火事、正体不明の黒川弁護士の出現。
それから1ヶ月。由利麟太郎のもとに黒川弁護士があらわれ「ある資産家の放蕩男が死に際し、息子日比野柳三郎のみならず、関係した女に産ませた娘たちにも分け与えたいと言っている。彼らは黄水仙の刺青のある青柳珊瑚とほかに萩原倭文子、桑野千絵である。ところがどうも柳三郎は静馬と同一人物らしく、彼は娘たち全員を殺そうとしているらしい。助けてやってもらえまいか。」
やがて都筑の家の古木のうつろにセメント詰めにされた萩原の死体、都筑の手になるらしい悪魔の設計図、殺人計画書が発見される。さらに静馬に盲目の娘、桑野が誘拐され、青柳は水車小屋で死体となって発見される。
そして都筑の逮捕。事件はこれで終わったといえるのだろうか。妻に裏切られたが故に、息子を陥れようと次々と殺人を重ねる悪魔!
石膏美人
三津木俊介の車に、せむしの男の引く棺桶型のトラックがぶつかる。中に石膏で作った恋人瞳にそっくりの人形、しかしその人形は「ああ、苦しい、あなた、たすけてちょうだい…。」と言ったようだった!三津木が後をつけてゆくと、せむし男はとある空き屋敷に行き着く。彼は、暗闇から殺人劇らしきものを見せつけられた。
瞳の父親は、一柳博士で空き屋敷の裏手に住む。空き屋敷の持ち主は一柳博士の親友藤巻博士という。その藤巻博士の息子洋一が、彫刻家で、瞳に恋しているという。しかし棺に入れられてその洋一の死体が届けられた!あの空き屋敷で殺されたのは洋一か?幸いなことに殺害現場には藤巻博士の赤外線カメラが残されたいた。関係者全員立ち会いのもと、そのフィルムが映し出される!
一方の博士夫人は、女の子をほしがった。他方の博士夫人は男の子をほしがった。しかしうまれて来たのは逆。産婆は赤ん坊を取り替えた。しかし成長して一方の博士は自分の息子が相手の子である証拠を見つけ、妻の不貞を疑った。嫉妬にさいなまれて我が子を殺し、相手の犯行に見せかけようとした!
腹話術、石膏人形、空き屋敷、赤外線写真、親子関係を示す痣、赤ん坊交換など推理小説向きの種がごっそりつまった作品で、いくつかは後年の作品に再び使われている。
獣人
大百貨店Qの飾り窓の中には子供用の寝台。しかしそこに飾られたのは生首!やがて腕や足が発見された。白鳥座の銀子は歳の離れた鵜沢白牙博士に囲われる事になった。その銀子は鮎川珠枝をしきりに自宅に誘うが不安。由利麟太郎が同道し、様子を探る。
博士が、金色の液体を注射すると、急にシャンとし、荒々しい息づかいをしながら、まるで猿のような格好で床の上を歩き回る。人間から一気にゴリラに退化したのだ!
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