文春文庫
大阪湾にかかる巨大な港大橋の上で、三協銀行の現金輸送車が襲われ、一億円の金が奪われ、行員二人が射殺された。そして二日後、同銀行貸付課の川添が不審死をとげた。
例によってクロマメコンビを中心に捜査が開始され、川添は碧水画廊に五十%の拘束預金を伴う両建融資を行ったが、出資法違反で訴えられ、困っていた事が分かった。さらにそれらの金が、消費者金融の桜木商事にながれ、川添が浮き貸しを行っていたこともわかり、事件に川添が絡んでいたことは確実となった。
主犯を追う聞き込みからパチプロの佐藤治がうかび、彼の部屋からは犯行を裏付ける数々の証拠が発見されるが、彼は埋め立て地で死体で発見される。それなら佐藤はぬれぎぬを着せられた上殺された、とすると桜木が犯人でつじつまが合った。ところがその桜木がためらい傷をつけた後マンション屋上からの墜落死。事件はこれで一件落着と思われた。
しかしマメちゃんは、浮き貸しや過度の拘束預金を伴う両建融資を行ったことが発覚すれば、責任者として自分の身が危うくなる貸付課長朝野の犯行と断定、にせの血痕までしめして自白をせまる。
こつぶながら非常にオーソドックスな推理小説と思う。二作目で板についたクロマメコンビの関西漫才顔負けの掛け合い、現金輸送車の中の射殺死体発見というショッキングな出だし、主犯を佐藤と思わせ、次に桜木と思わせ、最後は意外な朝野という三段構えの犯人追及スタイル、消費者金融、拘束預金、血痕の形状や落下死体と飛び降り死体の区別による犯罪の証明、浮き貸しなどの専門用語の蘊蓄、いづれもが合格点をつけられる出来映えと思う。欲を言えば、クロマメコンビ以外の人物の個性や悩みの記述がやや不足している点だろうか。
・運送保険普通保険(36p)
・パンクのさせ方(75p)
・銀行の預金は百六十七兆円、うち個人の預金は八十兆円、住宅ローン残高は十六兆円、わずか五分の一・・・・(130p)
・サラリーマン社会において、上役に人を選ばなければならないのは常識だが、部下もよくよく吟味して選ばなければならない。(143p)
・火薬粉粒の存在=亜硝酸反応試験(赤色)(159p)
・青酸カリ・・・メッキ、冶金工場、写真化学工場、薬局、研究所・・・(189p)
・髪の毛は一日0.2ミリ伸びる。(200p)
・あることないことなんでも報告しといて、判断はすべて上司に任せる。権限もないけど責任もない。そういう世渡りせんと・・・・。(209p)
・喉をかきむしりながらもだえ苦しむ佐藤を目の当たりにしたとき、私の中の何かが壊れ、消え失せました。・・・・私には分からない。分からないが、あの時、私は人間であることを放棄したように思う。(258p)