角川文庫
昭和12,13年ころの埋もれていた作品集。プロット、語り口とも非常に優れており、ストーリーテラーとしての能力を遺憾なく発揮している。
白い恋人
略
青い外套を着た女
貧乏画工土岐陽三がもらった紙には「日比谷公園入口で青い外套を着た女に会いたまえ」おもしろ半分で行ってみると青いレインコートを着た女。ところがその女は暴力団か何かに追われているようで後数日身を隠していなければいけないのだという。二人は結婚写真まで撮って、奇妙な同棲生活を始めたのだが…・・。
クリスマスの酒場
クリスマスの夜、恋人に捨てられてパリに旅立とうとする緒方を伴って、栗林は港近くの酒場に入った。ところがそこに元花売り娘で緒方に助けられたと言う女黄枝が登場。感謝する一方で彼女は、緒方からもらったジャンパーのポケットに入っていたハンドバックが盗品で、父が欲をだしたばかりに疑いをかけられ獄死した、との恨み節。ところがそこにハンドバックをしのばせた男を知っている、という人物が現れて…。
木乃伊の花嫁
鮎沢医学博士の一人娘京子と、博士の弟子鷲尾医学士との結婚は最初から不吉だった。鷲尾医学士と京子を争い、3ヶ月前に姿を消した緒方医学士かららしい結婚中止の申し入れ状、糸を抜かれた白無垢の晴着の袖の部分、そして当日血の雨が降り屋根裏部屋から顔を潰された緒方らしい死体。それからも結婚にむけての数々のいやがらせ…・一体緒方はまだ生きているのだろうか。
花嫁富籤
大黒屋の花嫁富籤にあたると、花嫁衣装と10000円が貰えるという。新宿のダンスホールを首になった甲野絹代はさる紳士からこの富籤をもらったが、なんと当たり番号。なじみの桑原はしがない運転手、その車で大黒屋にかけつけるが、よく見ると富籤は半券、大黒屋は後半分がそろわなければ払わぬと言う。
仮面舞踊会
維新の功臣緒方将軍の孫娘千晶は、慈善市で柚木静馬という貧乏画家に助けられ、ぞっこん。なぜといって祖母と映っている別の柚木静馬という青年にそっくりなのだ。しかし将軍は千晶と貧乏画家の結婚に大反対。
せむしの樹
里見慎伸介は、自動車事故で亡くなった男に頼まれて花かんざしを、小石川の幽霊屋敷に住む人見千絵に届ける。その帰り、彼は背中におおきな瘤をしょったせむしに襲われる。千絵を恋しながら、姿を消したせむし鵜飼静馬、そして千絵を子供のことから娘のごとく面倒をみてきた家政婦の波岡ぎん、三人の間にはどのような秘密が隠されているのだろうか。
飾り窓の中の姫君
飾り窓の中でいつもスフ入り衣装の宣伝をしている和子は、家出した男爵令嬢とそっくり。出会った二人は役所をしばらく変えて見よう、と言うことになったのだが…。
覗機会倫敦綺談
これはトム・ガロンという人の作品を訳したもの。無実の罪によって監獄暮らしをさせられたブレンダ嬢が釈放された。倫敦に向かう途中、豪州から来英した富豪のホープ・デーア嬢と同席、ところが身の上話をするうち彼女が突然なくなってしまった。そこでブレンダ嬢はホープ嬢になりすますが、結婚して財産を乗っ取ろうとするものやら、後見人になってうまい汁を吸おうとするものやら、世の中悪人ばかり。
020408