アリスの国の殺人       辻 真先


双葉文庫


現代っ子らしい感覚で、遊びとダジャレが全編をおおう推理小説。しかし、内容は非常にこっており、作者が十分に計算し、推敲した跡が伺える素晴らしい作品である。コンナサクヒンカケタライイナア・・・・。
話は主人公の綿畑克二の現実の話と夢の話がイレコ構造になっている。読みながら私は都築の「三重露出」を思いだした。

克二は、「不思議な国のアリス」を読んで感激し、童話を書くことが夢で幻想館に入った。しかし今は社の方針で、コミック雑誌創刊にむけて、鬼編集長明石の下で働いている。スナック「蟻巣」で若手の猿谷らむに原稿をいれるよう頼んでいると、そこに鬼編集長明石。さんざん仕事の遅れを絞られるが、その明石は「軽井沢の別荘に行く」と早めに出かけた。克二は酔いつぶれて2階にあげられた。翌日、明石が別荘で刺殺死体となって見つかった。
一方夢の世界では、克二とアリスの結婚式当日に、透明になることが得意のチェシャ猫が、ミッシツの小屋の中で打撲傷で死んでいた。嫌疑は2次元空間から3次元空間に移動できる克二に・・・・女王様は「クビヲキレ」とおっしゃる。
現実世界で克二は、蟻巣の照明がいつの間にか変わっていたこと等から、実は明石が事故で死に、みんなで「蟻巣」店内と同じにしたキャンピングカーに克二と死体を乗せ、軽井沢の別荘に運んだことを見破る。克二はみんなのアリバイ作りに荷担させられていたのだ。
明石はコミック誌発刊を勢力的に進めていたが、一方芳賀社長は雑誌の発刊をいったんはきめたきめたものの、明石の独善ぶりに手を焼いていた。また「少年ウイークリー」を出す文英社の苫田部長は売り上げの減少を恐れていた。そして現在二人が組んでコミック誌発刊をつぶそうとしていた。真実と明石の情熱を知った克二は狂い、彼らを殺す・・・・。
夢の世界では伴探偵が登場し、鉄人28号に吹き飛ばされた小屋が、チェシャ猫に被さり、猫が暴れて壁にぶつかり打撲死、操縦機を動かしたのは女王様となって円満解決。結婚あいなった克二は、「あばよ人間。僕はもうおまえたちの世界へ帰らない!」と思うのでした。

・ビーカーや試験管で精神を分析されているような毎日。家を出る・・・・見ず知らずの人の眼が私を取り囲む。・・・・・・でもその人たちが、遠慮なしにぐさぐさ私の臓物に視線を突き刺してくるのなら、こんちくしょうとか、いやんくすぐったいとか、それなりの反応が出来るわね。ところがそうじゃない・・・・・・誰の目を見てもガラス玉なの。確かに私の姿が映っているはずなのに、彼らは私を見ていない。そのことに気づいたとき私はぞっとしたわ。彼らにとって、私はいわば透明人間ね。関心のほかなんだわ。(107p)
・小説だろうが漫画だろうが、おもしろけりゃいいんだ!おもしろいだけで、どこがわりい、てんだ。(79p)