あした天気にしておくれ    岡嶋 二人


講談社文庫

南雲牧場にうまれた名馬セシアは、3億2千万円という法外な値段で、4人の馬主に買い取られたが、牧場でぼや騒ぎがあったため、鞍峰開発の牧場に引き取られることになった。しかし輸送途中、車の急停車で、セシアは後ろ足を骨折、競走馬としては使えないことになった。残りの3人からの追求を怖れた鞍峰は、主人公の朝倉と共謀して、セシアの狂言誘拐を行う。セシアを密かに薬殺し、犯人から2億円の要求書を届けさせるが、3人の内二人が予想に反して身代金を払うと言い出す。
そこになんと鞍峰も驚く、身代金受け渡しの指示。悪のりしている者はだれだろうか。もっともらしく見せざるを得ず、事態は警察にも知らされる。いよいよ犯人の指示で4人が、5000万円の包みを持って、府中競馬場に現れる。私は、万一の事件の発覚を怖れ、セシアを別の場所に埋め変えようとするが死体は掘り出されたどこかに持ち出された後。さて競馬場では犯人は、第一レースのページボーイなる勝ちそうもない馬を、それも複合馬券で買えという。
予想通りレース、ページボーイは惨敗し、買った馬券も引き取られない。ようやく犯人のトリックが気がついた。残りの馬券の大半を買い、払い戻しとして犯人は金を受け取ろうとしている事に気がつき、事件の全貌がわかった。しかし10万円の複合馬券、受け取ればその時が警察の手が伸び、私の身も危ない!私は何とかやめさせようとするが・・・・。
三つの犯罪が絡んだ作品。ぼや騒ぎでセシアが骨折、セシアと称し、かわりの馬を鞍峰の牧場に送ったが、それも骨折、狂言誘拐をしてごまかそうと偽のセシアを薬殺した鞍峰からセシアを取り返そうと墓をあばく南雲牧場。狂言強盗で取り繕うとする鞍峰、この機会に乗じて身代金を横取りしようとする南雲牧場の藤波・・・・。
身代金の受け渡しは最大の見せ場、作者は読者に最初に馬道利用と思わせ、次に発走除外による馬券の払い戻しと思わせ、ようやくにしてはずれ馬券で増えた掛け金を、あたり馬券で取り替えさせる方法に至らしめている。言って見れば馬の骨折事故からはじめて、狂言強盗を考えさせるという悪人の口から語らせる倒叙法的書き方だが、途中にオーソドックスなトリック解明を作者に行わせてているわけだ。三つの犯罪を絡ませる事で謎を膨らませている点も注目。
・他人の悪事を知った人間のとる行動=警察に届ける、関わり合いになるのを避けて黙っている、それをネタに脅迫する(175P)
・馬道=地下道は途中で二つに分かれ、一方は馬場へ、もう一方は競馬場の裏手にある厩舎へ通じている(241P)
・発走除外(302P)