蛮族ども            船戸 与一


角川文庫

 1980年4月、90余年にわたる白人支配を終え、ジンバブエ共和国は、穏健派黒人指導者ムガベ大統領をいただく国となった。このような状況下で、一代で巨富を築いたクリストファー・オズボーンは、財産をすべて金塊に換え、この国からの脱出を計ることにした。政府はそのようなことを当然禁じていたから、傭兵を雇い、死体に見せかけて鉄道で金塊を南アフリカのメシアに運ぶことにする。
 傭兵は、かってキサンガニで傭兵たちが追いつめられたとき、義務を果たし勇名をはせたオスカー・バットンを将とし、彼がかり集めた歴戦の強者達で、日本人の佐伯もその一人。しかし彼らの心は、一枚板とはゆかず、ローデンなどは最初から途中で力に訴えてでも指導権を奪おうと考えている。
 金塊輸送情報は、少しづつ漏れ、公安にあたる情報4課が周囲を探り始め、さらに白人に対し強硬な急進派が、恵津なる日本人をリーダーに、列車を強奪しようと待ち伏せる。
 ダミーの客はすべて直前にキャンセル。金塊輸送専用になった列車は、地元警察の検閲をなんども受けながら、メシアに向かう。途中ローデシア戦線から脱出してきた白人グループも躊躇無く射殺し、問題なく見えた。ところが、突然バットンが何者かに絞め殺された。しかもローデンにはアリバイがある。さらに次ぎにリーダーとなったヤーツイもまた殺された。
 疑心暗鬼の中、佐伯は、ローデンに罠をはらせ、ついに真犯人を突き止めた。しかしちょうどそのとき恵津等急進派が襲いかかる。降伏し、万事休す。佐伯と恵津が実は兄弟と判明するまもなく、今度は空から戦闘機の飛来。急進派も傭兵達もみな殺してしまおうと考えた公安当局の仕業だ。・・・・後は累々たる死体の山。


 事件の中でうごめく人間を描く、という考え方は他の作品と同じ。解放に沸く黒人、旧来の考え方を捨てきれない白人、黒人を殺すことに生き甲斐を感じているような傭兵たち、それらの考え方、行動形態が上手に描かれている。必ずしも実在の人物では無いようだが、モデルがあるらしく、存在感がある。もう一つこの小説の魅力は、悪漢とも善玉ともつかぬ人物が主人公で落ち着く先が最後まで分からない点。金塊はどうなった、果たしてこれで黒人の平和な国家が築けるのかとの疑問を残したまま終わっている。

・「がたがた言う前に殺せ!」という「収奪弛緩=行動主義」(328p解説)

990610