βの悲劇        夏樹 静子・五十嵐 均

角川文庫

2000年8月、スペイン領カナリア諸島のテネリフェ島で異常事態が発生、直ちにスペインのフリゲート艦がかけつけるが、同島では住民・観光客が全滅していた。調査した結果、原因は新種のインフルエンザ・ウイルスと判明し、その特異な形状からβウイルスと名づけられた。ところがこのウイルスは恐るべき破壊力を持ち、国や都市を滅ぼし、世界を恐怖のどん底にたたきこんだ。

目前に人類の存亡の危機がささやかれる中、冷戦時に人類という種を存続させるために南太平洋上の島に建造された「ザ・ドーム」が俄然注目されだした。密閉系の「ザ・ドーム」を汚染させてはならない、逆にそこに逃げ込めばすくわれる!

情実で娘を送り込もうとする者、「ザ・ドーム」のメンバーは交代制度を採っているが、任期がきてもしりぞかない団員たち、あるいは特殊部隊を派遣して「ザ・ドーム」を占拠しようと試みる者、同じように内部の者と連携して侵入を試みる親交宗教団体などいろいろな問題が出現する。

その間にもβウイルスは猛威を振るい続け、スペイン、ポルトガルはほとんど国家としての機能をなさなくなり、フランスは政庁をニューカレドニアに移動させるなどする。地球ノン裏側にある日本なども危ない。

一方で、ウイルスを防御するワクチンの研究も進められるがウイルス自体が次々に変種し続けて追いつかないかない。世界はいよいよ終末を迎えようとする・・・・。

よく調べられてはいるが、どうも現実離れしている感じがする。核戦争と違い、人類が対抗策を見出しえないほどの強力なウイルスが出現し、空気感染だからといって洋上の孤島にまで菌が飛んでゆくとはどうも考えにくい。作者はどうも人類の再出発、という点にポイントを絞っているらしい。そのためにドーム内の人間のみが生き残るとしたようだが、そのために話し全体がひきづられている気がする。

夏樹静子の作品は問題に直面した特に女性の喜びや悲しみをうまく描いている作品が多いように思う。しかしこの作品の場合、どうも登場人物の行動や決断に現実味がなく、ストーリーが上滑りしているように感じた。

しかし作者にとってはまったく新しい分野である。そのチャレンジング精神はすばらしい者、と感じた。

・ フッ化カリウムはここに貯蔵してございます。教祖たちのお持ちいただいた燐酸メチルを加えますと、猛毒のWXガスが発生いたします。(394P)

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