ビッグゲーム         岡嶋 二人


講談社文庫

野球をあつかった推理小説の傑作というと、有馬頼義「四万人の目撃者」天童真「鈍い球音」坂本光一「白色の残像」などが思い浮かぶ。此の小説は、投手の投げる球の球質を知らせるという点では「白色の残像」に似ている。
新日本アトラスは、おふくろなるプログラムを用いて高度データ解析を行い、三年間優勝を続けてきた。ところが今年は全く振るわず最下位。
ブリックス戦で七階表、突如として停電が起こった。電気がついたときに一塁側でデータを集めていた沼辺が、照明灯から落ちて死んでいた。なぜ、照明灯などに登ったのか。そして一回に一枚の割合で撮られた投手の写真は何を意味するのか。翌日沼辺の代役になった田村が行方不明になった後、奥多摩の自動車スクラップ置き場で死体となって発見された。
モーションの早い投手は良い成績を上げている、捕手のサイン通り投げなかったら勝利できたなどのデータから秋月課長、佐伯、涼子等は指令が盗まれていると判断する。しかし誰が観察し、誰がそれを打者に伝えているのだろうか。事件が解明されるに連れて、怪しい女を追った秋月課長が交通事故にあったり、間に入った岸和田が殺されたり、あるいはデータが盗まれるなどりスリリングな事件が相次ぎ、読者を飽きさせない。
サインは内野手、観衆の一人、監督、コーチ、選手と実に複雑な手続きで盗まれるのだが、その中で簡単な送信機を使ったくだりと発信源を特定するためにフォックスハンテイングをするくだりが面白い。また、照明をわずかに調節することにより、打者に有利にしたり不利にしたりするアイデアも感心する。
結局犯人は、優勝監督の更迭をしたい社長の発案で、会社ぐるみなのだが、最後に罠をかけ、関係者をデータ室に逆に閉じこめてしまうというエンデイングが洒落ている。
・アパートの保証人の確認(287p)
・盗聴器の使用(327p)