創元推理文庫
OLの若竹七海は社内報「ルネッサンス」の編集長に抜擢されたが、お達しで「小説をのせろ。」そこで先輩に頼み込むと匿名作家を仲介してくれた。その作品は
4月 桜嫌い・・・大きな桜を囲むようにコの字型アパートの一室で火事さわぎ!
5月 鬼・・・とべらの木は鬼を追い払うという。誰が鬼?
6月 あっと言う間に・・・商店街対抗野球スパイ合戦。レストランでブロックサイン!
7月 箱の虫・・・ロープウエイに乗ったはずの子供が消えた!表現の問題。
8月 消滅する希望・・・滝沢の夢にあらわれる「抱いて下さい」という女性。同花受粉 朝顔の秘密とは?
9月 吉祥果夢・・・高野山の宿坊で隣室の女性がくれた柘榴。鬼子母神の再来か?
10月 ラビット・ダンス・イン・オータム・・・俳句の好きなお客さん、さいとう氏の あかちゃんの名前は?
11月 写し絵の景色・・・木版と銅版を組み合わせる由木氏。ところが作品盗難!
12月 内気なクリスマスケーキ・・・シクラメンの根をいれたクリスマスケーキを贈る ・・・一体何の意味が?
1月 お正月探偵・・・おれは本当に買い物マニア?当たった宝くじの行方は?
2月 バレンタイン・バレンタイン・・・バレンタインチョコの意味。何人の会話?
3月 吉凶春神籤・・・二人でひいたおみくじが全部凶になったわけは?
1年終わって私は謎解きをする。この作者は過去の日記を題材に小説に書いたと考え、文中にあらわれた干支の話しなどを手がかりに時系列で並べ替える。9月は主人公のぼくが、高野山の宿坊で隣の部屋にいたオバサンから鬼子母神出現を聞かされる話だが、宿坊で男女は区別するはずだろうから、「ぼく」は女性に違いない。おそらく作者のお姉さんの中絶の話しだろう。8月に主人公の滝沢が朝顔に突っ込んで死んでしまう話があるが、、滝沢はお姉さんの恋人で、作者はお姉さんの仇をとったに違いない、などと考える
しかし作者にはさらにそれを越える意図があった・・・・。
読み始めた時、何と軽い推理短編の寄せ集めか、と考えた。ところが話は月を追うごとに面白くなって行く。そして最後に若竹七海と匿名作家による2度のどんでん返し、と来てやられた、と思った。たとえば都筑の「三重構造」などで代表される枠構造小説なのだが、そうは気がつかせないところがすごい。・・・まいったね!
・ウイルソン 殺人百科(97P)
・カイコの怖い話(105P)
・同花受粉といって、花がしぼむだろ、そのしぼむというベクトルを利用しておしべの花粉を内側にあるめしべにつけるんだ。・・・同花受粉だけくり返していると・・・花は小さくなり、弱くなり、ついには種子を残さなくなって滅んでしまうんだ。(138P)
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