僕の殺人           太田 忠司


講談社文庫

「僕はこの事件の犠牲者であり、加害者であり、探偵であり、証人であり、またトリックでもあった。」という記述から作者がジャプリソの「シンデレラの罠」を強く意識し、折原一のような読者を欺く作品を描こうとしている真意が分かる。しかし文章は平明でわかりやすく、トリックも割に自然でレベルは高く、青春本格ミステリーの名に恥じない作品である。

僕が5歳の時、信州の別荘でその惨劇は起こった。母は首を吊って死に、父は階段から落ちて、植物人間となり、僕は一切の記憶を喪失し、気がつくと叔父の山本真二郎のもとに預けられていた。小林なる記者にそそのかされて僕は自分の過去を調査し始めた。
胡蝶グループを育て上げた祖父の後を受け継ぐ予定だった父は、作家志望で、弟に劣等感が強く、しかも子の出来ない身。彼は、中沢祥子と結婚するが、祖父の美術品を相続するためには子が必要。やむなく、祥子に作らせるが、選んだ相手があの気に入らない弟の真二郎。怒って彼女の首に紐をかけ、山と積んだドライアイスの上に載せたベッドに寝かせ、融けると体が下に落ちる方法(184p)で縊死させてしまった。しかし駆けつけた叔父と対決、階段から植物人間になってしまったらしい。
それでは僕は真二郎の子と考えたが、別荘を探すとなんと僕自身の死体。雄一郎は祥子の子も弟憎さで殺し、そっくりさんを誘拐してきて子に仕立てたらしい。それが僕?本当は一体誰なんだろう。

・伝言電話の利用方法(130p)