ブルース        花村 萬月


角川文庫

暴力団山野興業専務徳山、いつも日本刀を振り回すホモだ。
徳山に口きけるのは、村上くらいだ。
南シナ海の烈風。眼下で砕ける三角波。
激しい時化にうめく巨大タンカーの中でのスラッジ回収作業。
村上の友人犀が命を落とした。徳山が仕向けたようなものだった。

横浜で毒づいたリーゼントの若者を村上は危うく殺すところだった。
徳山の舎弟八木が止めた。
その八木が美也子を争って、美也子の男に殺された。

「お前のギターは八十点さ。」
客の村上に説教たれられてサチオは戸惑った。
村上がサチオのギターでブルースを弾き始めた。
客がしびれた。サチオの負けだった。

若い男が村上に大麻を売りつけた。
ちょっとしたことで争いになり半殺しにしてやった。

徳山の女、綾はエキセントリックな歌姫。村上のギターに酔った。
今度は、村上にほれた。抱かれた。

徳山は美也子と美也子の男を叩き切った。
村上と綾の濡れ場を見た。しかしあっさり引き下がった。
「八木が死んだから、俺は仇を討って精力を使い果たしちゃったんだ。」

村上と綾は激しく何度も結ばれた。
幸せな日々が続いた。
綾は、自分達のバンドに村上を引き入れることにした。

突然村上は「大麻の元締め」として引っ張られた。
身に覚えのないことだった。
高橋係長と戸上刑事はしつこかった。
自由を奪われることがこんなにつらいとは思わなかった。

徳山は村上をチクった奴を探した。
サチオと売人…・・二人とも叩き切った。
村上には優秀な弁護士をつけてやった。
やっと解放された。

綾との再会…・・幸せだった。
「さあ、これからはギタリストだ。おまえのバンドで北海道でも東北でも行くぞ。」
しかしサチオと売人が行方不明になった、と知った。

「殺しちゃいけねえよ。」やっぱり、村上には徳山が許せない。
銃を買った。また徳山の巨大タンカーに乗りこむ。
そして対決……・。

 まさしく北方謙三の解説にあるように、読むブルース。短い、乾いたセンテンスがものすごいことをさりげなく伝える。
自分だって売人を半殺しにしている。まして徳山は、自分の仇を撃つために二人を殺した。殺さなくったっていいじゃないか。確かにそうだ。しかし何か許せない。スラッジの海に消えた犀の絶望的な顔が目に浮かぶ。やっぱり、おれは徳山をやらなけりゃいけない。ところがおれは失敗。もう、これまでと思ったら、どこか狂って、アンコ共が徳山を倒した。そして海に投げ入れ様としている。これでいいのか。悔いはないのか。
「徳山さん。あいかわらず俺、青臭いのがなおらないよ…・。」
あらすじを原文のスタイルを真似て書いてみた。やさしいようで難しいですね。

・ 満員電車に乗るサラリーマンには電車という檻があり、会社という檻があり、給料というきつい檻があり、家庭というどうしようもない檻があり、老後という来るか来ないかわからん檻さえある。…・・いいか。人には自分に合った檻があるんだ。そして誰も檻からでられない。だから、辛い毎日は、絶対になくならない。酒でも呑め。シャブを射て。(215P)
・ ブロンクスのギャング共はビート・ザ・システムと叫んで強姦し、殺し、奪う。しかし弾の飛んで行く方向は同じ下層階級で、結局は自分の心臓に弾は飛んでくるのさ。(216P)
・ 奴隷解放とは、アメリカが農業国から工業国に移行するための、興業労働力確保の政治的一手段に過ぎなかった。(390P)
・ チャーリー・バットンの生き方は、ずるくて、汚くて、少しだけ格好良くて悲しいから。だからブルースでさ、ブルースなんだよ。人格者なんてクソ食らえ、だ!(502P)
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