超高層ホテル殺人事件 森村 誠一


光文社文庫

 地上62階の超高層ホテルに浮かんだ巨大な十字架。明日開館が予定されているイハラ・ネルソンホテル。向かいのビル屋上の高級レストランでは新社長に就任した猪原杏平と有名人が華やかに行き交う。突然、光の十字架の下あたりから、だれかと争って突き落とされるようにして、人が落ちてきた。あわてて駆けつける。ホテルの共同経営社NIが送り込んできた総支配人ソレンセンが池の中央にトマトケチャップをぶちまけたように見事に砕け散っていた。落ちた部屋は16階1607号室、鍵がかかっており、駆けつけるまで1607号室から出た者はいない!
 アリバイはあるが、その時の状況から大沢秘書が疑われた。彼は事件が起きる直前にベッドソファを乗せたトラックを池とホテルの間のわずかな空間に運ばせている。ソレンセンは十字架が点灯する前に前に、何者かに突き落とされた。犯人をかばうために、大沢は点灯直後にソファーのうえに飛び降りて見せたに違いない。しかししばらくしてその大沢が大阪府茨木市の溝の中で水死体となって発見された。
 それから一ヶ月以上経って東京の分譲マンション<新宿スカイハウス>の一室で男の腐乱死体が見つかった。室はチェーンのかかった密室。男は是成敏彦。猪原グループの属する東西銀行と対立関係に在る芙蓉銀行是成信彦の御曹司である。その妻友紀子の父浅岡哲郎は、杏平の父猪原留吉とライバル関係に在るホテル業界の雄である。犯人はどうやって外に出たのか。この事件は最初の二つの事件と何らかの関係があるのか。
 大沢殺しの容疑者として猪原杏平等が浮かんだ。一方敏彦殺しの容疑者として夫婦仲が悪く、とかく噂の多い友紀子が浮かんだ。しかし犯行当時猪原等は東京に、友紀子は大坂にいたと主張する。アリバイが成立しない時間帯が七時間ほどあるが、それだけの時間で死体を東京から大坂に運び戻ってくる、あるいはその逆は不可能に見える!しかし二人が共犯でおたがいに途中まで行き、死体を交換したとしたら…・・。チェーンのかかった密室の謎は解けた。鎖をペンチで外して室外に出て、二十センチほどあいた隙間を利用して元にもどせばいい!犯人が追いつめられた!

 話のながれに猪原グループとこの際東京進出を企てるネルソングループの争い、同グループと浅岡グループのあらそいが絡んでくる。その争いの中で犠牲にされ、もがく男と女がある。その辺が良く書かれており、ドラマを構成しているのだが省略した。

(1971 38歳)
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