Cの悲劇        夏樹 静子

角川文庫

結婚十周年を迎えた芦田和賢と千巻。和賢はADメデイカルの医学関係コンピュータのシステム・エンジニアで在宅勤務を認められている。二人は東京郊外の閑静な住宅街に一戸建てをもち、何の不自由もない優雅な暮らしをしている。

隣の家にビル管理会社に勤めるという独身の梶行雄が引っ越してきたのが事件の幕開けだった。夫はベッドまで持った自室をもち、よくそこで考えにふける。あるとき彼女が帰宅すると夫の部屋があらされ、ペーパーウエイトで殴り殺されていた。

会社から小田切という男が派遣され、夫の残していった資料を調べだした。彼は夫が殺されたのは仕事関係ではないか、と示唆する。

触発されて弔問客の中で不審な男を探し当てるとADメデイカルの競争相手東京ソフトサービスの初岡貢と判明した。しかし面会に行くと秘書なる和倉元美が応対し「夫は初岡に1000万円で情報を売っていた。」と知らされる。

困っていたところ、梶と話している千巻のもとに小田切が現れ、証拠を並べ立て「梶は産業スパイだ。金のもつれから芦田を殺した。」と告げる。梶と小田切は喧嘩になったが、気がついたとき、千巻は梶の猟銃で小田切を撃ち殺していた。千巻は夫を殺したかもしれない梶を愛していることをはっきり自覚した。二人は愛を確かめ合ったあと、裏高尾の山林に小田切の死体をうめた。あれが白骨化してしまえばいい!

警察は夫に女がいて自室のベッドで関係していた可能性をにおわせた。

隣の家に花沢ユカリなる女性が引っ越してきた。彼女にはマミという娘とチョロという子犬が一緒だった。垣根を越して娘と犬はよく梶の家に入ってくるようだった。それにつれて梶とユカリがどんどん親しくなってゆくように千巻には見えた。

やがて警察の捜査で大がかりで悪質なコンピューター犯罪が暴露され、あの和倉元美が逮捕された。彼女は和賢と関係していた上、業務上のトラブルから和賢を殺害するにいたったことまで自供した。梶は夫殺しの犯人ではなかった!

後には小田切り殺しだけが残る。梶とユカリはもはや抜き差しならぬ関係にまで陥っているようだ。嫉妬と絶望に駆られる千巻・・・・・。

コンピュータ産業の虚実を描いた、というが、他の作品に比べ、少し消化不足のように思えた。主人公が梶に傾斜してゆくプロセスも納得しにくいところがある。

しかしコンピュータ専門家のエキセントリックな考え方は面白い、と感じた。

020928