Cの福音           楡 周平


宝島文庫

 「野獣死すべし」の伊達邦彦、「新宿鮫」の鮫島警部に次ぐ悪のヒーロー朝倉恭介登場、と言ったところ。朝倉の設定は航空機事故で両親を失い、異郷アメリカで天涯孤独になるものの、ある富豪に助けられた。しかし、その富豪が裏の道の権力者。朝倉は自身がふとした機会に人を殺し、正業に就けなくなったことから、富豪の力をバックに日本に関税の盲点をついてコカインを輸出しようとするところから始まる。
 日本の一流貿易商社員を女で誘い、コカインづけにする。日本に帰ったときに米国から肥料を輸入する船の日程、船番号、コンテナ番号、カートン番号などを報告させる。移送される列車に潜り込み、出荷されるカートンの一部をコカインのカートンに入れ替える。日本の港で件の商社員に立ち会わせ、オーダーと違う品物が入っているカートンを発見させる。カートンは送り返されるまで、保管倉庫に保管される。その保管倉庫に夜間潜り込み、番号を頼りにコカイン入りカートンを持ち出し、後に正しいものを詰める。証拠は残らない。
 パソコン通信でお互いを知られることなく、ひよこと呼ばれる販売員に指示し、さばかせる。売り上げ代金は、一度香港に作った幽霊会社に振り込ませる。一度のふりこみ金額は1万ドル以内、こうすれば少額故検査されることもない。振り込まれた金は自動的にオーストリアにある朝倉と朝倉のボスの口座に振り込まれると言う手口である。
 しかし末端の消費者がうっかり口を滑らしたところから、中国系マフィアがその存在を嗅ぎつける。件の商社員の口を割り、彼らは、税関が怪しい、と夜間密かに待ち伏せる。中国系マフィアは5人、忍び込むのは朝倉一人、朝倉は絶体絶命と思われたが・・・・。
 税関をごまかした密輸という点では真歩裕一の「連鎖」、パソコン通信の犯罪利用と言う点では我孫子武丸「メビウスの輪」乃南アサ「ライン」、コカインの直接注射による死亡は柴田よしきの「RIKO」を思い起こさせた。

・カラスの習性は実に我々の世界に似ていてね、知能が極めて高い上に悪食で生命力に満ちあふれている。一見したところ仲間同士の結束も強いように見える半面、弱った仲間は決して見逃さない。(72p)
・今の世界にめずらしく未だに徹底した管理貿易が行われ、体のいい鎖国の状態が続けられているかのように、恭介の目には映った。(74p)
・コンテナによっては運ばれてくる貨物の搬出については、年に数度の立入検査をのぞき、滅多なことでは税関の検査どころか、立ち会いすら受けることはない。(151p)
・コカインには、マニトールが五割ほど添加剤として混入されていた。
・歯医者の使う麻酔薬・・・塩酸リドカインに3%のエピネフリン
・コカインの直接注射(336p)
・トカレフの操作(363p)
・サブマシンガンの操作(371p)

(コカイン密輸ノート)
ゴッズマン35685005カートン用意
男が金と交換で受け取る
サザンパシフィック鉄道5個のカートンを入れ替える。
ターミナルで6本のコンテナが破られ、荷抜きがあったのは2個
稲田にU5540843コンテナのシールが破られているとの報告入る。
恭介ゴムボートを用意。
大井埠頭にU5540843コンテナ到着。
橋本、木村ロットに違う商品が入っていることを確認。
誤送カートン別途保管エリアへ。後日の通関を待つ。
恭介夜間に5カートンを正規の品物の入っているものと交換。

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