講談社ハードカバー
手塚道郎は、友人西嶋雅人が暴力サラ金東建ファイナンスから借りた金の連帯保証人になっていたため、大金が必要になった。そこで考えたのがパソコンで偽札を作り、銀行のATM(現金自動預払機)で真券に変えるという方法。田舎の信金のATM装置を破壊して紙幣識別装置を盗み出し、お札に含まれている微量の磁気、すかし等に注意しながら通過する偽金の作成に成功。交換には成功するが、事情を知った東建ファイナンスは、西嶋を人質に、手塚を捕らえ偽札を作らせようと網を張る。手塚は絶体絶命、しかし謎のじじいが現れ、救い出される。実は彼は彫りの鉄と呼ばれ、かって手製の偽札を作って世間を騒がせた男、富士市にある竹花印刷なる小さな工場に手塚を連れて行く。手塚は、鉄に薦められて、名前を保坂仁史と換え、社長の娘幸緒等とともに本物の偽札を作ろうと決心する。
保坂は、協力して機械・材料を揃え、みつまたの栽培もはじめる一方、新東美術なる大手印刷会社に勤め、印刷技術を習得する。しかし、竹花印刷が発注先が倒産し、連鎖倒産の危機。ところがこの話を調べてみると、大手スーパーが竹花印刷の土地に眼をつけ、帝都銀行に取得を依頼、その銀行が、あの東建ファイナンス(興業)をつかって進めている乗っ取り劇であった。しかし相手は、じじいを確保し、別の機械の紙幣識別装置を与えて、これを通過する三億円を作れと強要。ついに保坂はこれを製作に成功するが、東建側はまたも保坂を狙って来る。高速道路を利用したスリリングなじじいと金の交換劇が展開されるが、じじいはここで絶命する。
保坂は、今度は鶴見良輔と名を変え、刑期を終え、出所してきた西嶋等とともに、真の偽札を作り、帝都銀行に真券と取り替えさせようとする。手広く麻薬密輸を行っているソンなる男になりすまし、東建興業の末端組織に接触、信用させて、麻薬の大量輸入の話を持ちかけ、ナンバー2の江波をその気にさせる。東建興業に当座の金がないことを読み、必要な金は帝都銀行経由で融資し、手形を発行させることにする。いよいよ銀行に貸す偽金作りに励む。しかし舞台も設定し、五億円受渡の日・・・エキストラの一寸した不注意が、たくらみの発覚を招く。またしても東建興業との派手な追跡劇、それを振り切ってさて手形をと思ったら、今度は仲間の裏切りでぱー。
手塚に戻り、幸緒と愛の巣らしきものに落ち着いた彼は決心する。「いままでの経験を小説に書こう。大ヒット間違いなしだ。タイトルは奪取、ペンネームはいままで使った多くの偽名から一字づつとって真保裕一・・・・。」
主人公を通じて語られる、偽金を作る工程のしつこいくらいの解説が臨場感を盛り上げ素晴らしい。この記述が、主人公の偽金作りへの情熱と相まって、作品全体にユーモアを感じさせ、通常のバイオレンス小説とはひと味も二味も違って見える。劇画的で主人公の心の動きはと言われれば、確かに不十分だが、エンタテイメント小説としては素晴らしく、私は二日かけて一気に読み上げた。
・改刷のポイントは二点あり、先ず第一点が、市場では絶対手に入らない、雲母粒子の入った特殊インク、OVIによる「日本銀行」マークの印刷で、これによりカラーコピーの複製は、百パーセント防ぐことが可能になります。もう一点は磁気情報のすり込みで、一枚一枚、印刷時に特殊技術を使い、磁気によってナンバーを紙幣に打ち込むもので、いくら表面的な印刷状態をまねても、磁気情報の面から真贋の見極めが瞬時に出来るために、偽造防止が格段とアップするものです。(521P)
990201