講談社文庫
現役を引退したプロ野球選手天矢輝彦は、美術学校の事務員として就職した。彼の少し遅れた歓迎会が行われた夜、理事長の田谷義昭が刺殺体となった。この学校では、前理事長も半年ほど前撲殺された。果たして二つの事件は関係があるのだろうか。
しかしそれから先は随分わかりにくい記述の様に思った。感心しないが結論を書くと
動機=事務長の山崎が、財産と地位を目当てに、前理事長の娘の蕗島理世子に手を出したが発覚。前理事長が、山崎を呼びだしたところ口論になり、山崎が前理事長を撲殺した。新理事長の田谷は蕗島を犯人と考え、証拠のタイムカードを種に、強請始める。蕗島は山崎と田谷を殺すことを計画する。
殺人方法=蕗島が、田谷を呼び出し、眠らせる。窓を開け、氷点下にしたため、田谷は凍死してしまった。二人で死体を着替えさせ、ストーブのスイッチを入れ凍死の偽装をおこなう。その後、別の女性に心を引かれた山崎をつなぎ止め、新たな脅迫者の存在を匂わせるために、蕗島が単独で死体にナイフを突き立てた。
これにコピーされた鍵の話、ドアのノブの話等が絡むが、何度読み直しても、六割くらいしか理解出来なかった。
各章のタイトルが非常に凝っている点が印象に残った。解説で「虚無への供物」が、この作品と共通点が見られるとしている。私には「虚無への供物」も非常にわかりにくかったから、この作品だって分かる人には分かるのかも知れないけれど、凡人の立場からすると次のような点で不満が残った。
(1)人物像と人間関係がはっきりつかめない。年齢は、性格はなど。
(2)(1)のせいか、どうも事件の動機が鮮明に浮かび上がってこない。
(3)殺人のプロセスは非常に凝っているのだが、凝りすぎて素人には理解できないのではないか。
(4)視点がどうも第三者であったり、天矢であったり揺れ動いているようだ。