偽造証券            幸田 真音


新潮文庫

外資系証券会社に勤務していた三輪祥子は、その後作家に転身した。彼女は今回堅苦しい日本を飛び出し、ビジネスの拠点をニューヨークに移した女性達の実態を取材するために渡米する事になった。たよりは昔の同僚である。
花形だった美都は有望なデイーラーでシカゴの銀行に勤める倉丘純一と結婚し渡米したが、今回尋ねてみると行く先が分からない。堀道子や多田優子の話によると倉丘はデイーリングで失敗し、その後堀の勤める邦陽銀行に先輩の副支店長川島のひきで勤務することになったが、ある日突然会社に来なくなったという。預り証券を持ち逃げしたとの噂さえたっていた。
美都を尋ねるうち、祥子はふとしたことでゲイの榊原満に助けられるが、美郷はなんと彼女のところに転がり込んでいたのだ。美卿の話から失踪した倉丘は、後日のために必要だから開けないで大切に保管せよ、と木箱を預けていったと言う。それをおそるおそる開けてみるとなんと出てきたのが偽造証券だった!
一方委、ヒロ真壁は邦陽銀行で市場調査部で働くことになった。銀行内の監査をすすめるうちに、預り証券の現物と融資の記録上の数字を合致させるために、書類が故意に改竄されている形跡を数カ所発見した。
銀行員を巻き込み偽造証券を担保に金を引き出す、後日銀行員は他の保管証券と偽造証券を入れ替える、後日犯人は金を持参し、本物の証券を手に入れる、このような犯罪が果たして可能なのだろうか。そのような国際的詐欺団は誰によって操られているのだろうか。ヒロ真壁と祥子等の活躍で犯人は次第に追いつめられて行く。

日本でもこのような国際的な小説を書く女性が現れたことは驚きだ。服部真澄は「鷲の驕り」などで、この分野を扱ったが、それとはまた一つ違った書き味で、清水一行などの企業小説米国版と言った趣である。
著者紹介欄に「米国系銀行及び証券会社でデイーリングや外国債券セールスを通じ、直に国際金融市場に関わった。」とあるだけあって、記述が非常に具体的である。またニューヨークでの生活が長いのか、レストランの紹介など丁寧で、読者はちょっとニューヨークを案内してもらっているような気分になる。
010822