光文社文庫
吉敷竹史刑事は、Tの字の形をした橋の上に十二単のような着衣をの裾を長く風になびかせた女がのっている彫金を、銀座のとある画廊で見つけた。それは羽衣伝説と名づけられていた。作者は書いてなかったが、五年前に別れた妻、加納通子の作品である事は間違い無かった。捜査の合間に、尋ね歩いているうちに、その形状が天の橋立にある回転橋と同じと気づく。そして通子と再開する。
通子との思い出が語られるうち、彼女の結婚を恐れる理由が明らかになる。幼い日に自宅に起居していた麻衣子という女性が婚礼の日首を括って死んだ。そしてそれを発見した母が突然苦しみだし、死んでしまった。
吉敷は、それが父親を母と麻衣子が争い、追い出される事になった麻衣子が自殺した、ところが母に対する恨みのたけを述べた遺書を残した、第一発見者の母は、それを飲み込んでしまった、墨にそういう母の行為を予想して砒素系の毒が入れてあったから死んでしまったものである、と解き明かす。吉敷と通子に愛が復活しかかる・・・・・。
以上のストーリー展開の途中に、吉敷が通子との出合いに始まる昔の生活を回想するという形を取っている。(解説者が吉敷の行動を語ると言う形でこれも特徴)前半の羽衣伝説の彫金に関する記述がムードがあふれ、なかなか良い。作者は詩が好きで、放浪生活のようなものにロマンを感じている様子がかいま見える。ただ意識してそうしているのだろうが、麻衣子が殺人者となった藤倉事件の解説が欠如している為にもどかしさを感じた。また後半の麻衣子事件については唐突に事件が登場し、解決している、という感じは否めないかもしれない。
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