創元推理文庫 日本探偵小説全集3
発狂
米田鉄工場の職工長だった秋山五郎は、経営者の米田と争った際事故に遭い、両足を切断され廃人となった。息子の敬作は、父に復讐の鬼になるように仕込まれた。長じて稲葉保と名を変えた敬作は、米田の経営する銀行に入り、頭角を表し、娘の敏子と婚約間近になった。誕生日に敏子を連れだし、睡眠薬で眠らせた後、横浜にある彼の居間と全く同じに作った東京の居間に連れ込み、顔にグロテスクな入れ墨を始め、復讐開始。代わりの犯人も仕立て、完全犯罪に見えたが、意外な落とし穴が・・・・。
角田喜久雄の作品はいづれも才気あふれていて面白かったが、これだけは例外。結末が暗すぎてどうにも好きになれない。全く同じ構造の部屋を二つ用意し、犯罪現場を錯覚させるトリックは最近の推理小説によく使われている。(1927
21)
死体昇天
幸次・時子夫婦は、親友の浅川と共に北信州の山に向かう。しかし幸次は、浅川が時子に熱心な事を十分知っていたし、嫉妬もしていた。その浅川が谷に落ちた、と時子が山小屋に飛び込んできた。時子を残し浅川を探しに行き発見するが、わざと危険な北谷周りで戻りかけたところ、浅川は本当に谷底に転落してしまった。幸次は誰にも会わなかった、と主張し、時子も警察もごまかした。しかし浅川は幸次の水筒と共に落ちていった。春になってあの水筒と死体が一緒に見つかったとしたら・・・。
翌年秋、ついに浅川の死体が見つかり、幸次は時子とともに地元の警察に呼ばれる。近くで水筒も見つかったが、不思議なことに銃が貫通し、弾の入射側に新しい血痕がついている!
死体が木に引っかかって途中でとまり、猟師の鷹を撃った弾が鷹、水筒、死体の順で通過したというトリッキーなアイデアが面白い。(1929.8
23)
怪奇を抱く壁
上野駅前の食堂で加賀美の近くのテーブルにベロア帽の男と眼鏡の男。眼鏡が、ベロア帽の床に置いた古トランクと持参したそっくりの古トランクを取り替え、持ち出す。加賀美がつけて行くと、眼鏡は郵便局に入り、古トランクの中の包みを取り出し、警視庁捜査一課長加賀美敬介殿あてに送るではないか。眼鏡は洋酒喫茶に入り新聞にじっと見入る。トイレに経った隙に新聞をみると、尋ね人蘭の「井出洋子の居所または常用のわに皮ハンドバックの所在を知らせてくれたら3万円・・・井出隆一郎」という記事を赤く囲んであった。そして男はトイレから逃げた。
例の包みが加賀美に届き、中を開けると60万円。何の真似だ!しかも60万円の盗難届はでていない。その後ベロア帽は小倉の部隊にいた陸軍大尉の田所と判明したが井出は該当者がいない。さらに井出から第二の包み、今度は1万8千円。そして今度は尋ね人蘭に「SS氏に継ぐ。ハンドバックをミカドに持ってくれば5万円呈する。井出」の広告。
指定時間にミカドについた加賀美は、眼鏡の目的が表面親切を装いながら、自分の妻を殺して家のコンクリートに埋めた田所へ復讐を試みていることを知った。(1946.9
41)
991021