花盗人      乃南 アサ


新潮文庫

薬缶
結婚してから、仕事は妻におしつけ、見向きもしてくれないエリートサラリーマンの夫。…・殺そうと思ったことなんかないけれど、死んでくれたらと思う…・そんな潜在意識を持つ瑞恵。横になってテレビを眺める隆。瑞恵の手には沸騰した湯の満ちた薬缶!
寝言
寝言と歯ぎしり、そんなものが離婚の原因になることもあり得る。でも本当に我慢出来なければ離婚した方が良いときもある。そうして自由をえた方がいい。
向日葵
母のぬくもりとかカレーの味などを理解できない男。知り合った女が気に入らなくなって殺害、蝋を流し込んで固めたのだけれど、やがて腐敗臭。そこに別の女が…。
愛情弁当
料亭は若奥さんで持っている。ほとんど家に寄りつかぬ亭主が本当に来なくなった。同じ頃、自立能力のない息子が東京の演劇学校で学ぶようになった。彼の元には毎日母親手作りの愛情弁当が届けられた。向日葵と同様、死体処理ミステリー
今夜も笑っている
坂の上の白い家から、けたたましい笑い声が聞こえてくる。鈴子は白い家は田代さんの家と聞いていた。母は「下品な笑いね。あそこのおばちゃんは神田さんになったのよ。あの人は魔物よ。」と言った。その神田さんのご主人がまも亡くなった。鈴子が四年生になったとき、おばちゃんが我が家にやってきた。白い家を壊してアパートにするのだという。しばらくして父が家を空けるようになった。白い家からまたけたたましい笑い声が聞こえるようになった。それが聞こえると鈴子の母は無口になった。坂の上の白い家から、けたたましい笑い声が聞こえてくる。
他人の背広
見知らぬ者同士が寄り集まった職場。遅くまで残業していた主人公は見知らぬ他人の背広を着て帰る。そいつの背広の財布には金もたっぷり入っており、うまく行ったように見えたが…。なんとなくウイリアム・アイリッシュの作品を思い出させた。
留守番電話
康裕が、新しい部屋に着き、電話をつなげたところ、その回線がまだ生きていた。そして留守番電話には女から男との再会を求めるコールが何度となく入る。そんなおり康裕は会社で隣の席の中根さんがかける電話の会話を聞いてしまった。「だましたのね…。」
家に帰って留守番電話を再生するとそれが録音されていた…。
脱出
気がついたときには、俺は窓一つない闇の中にころがされていた。外から聞こえる会話。どうやら俺は女房とその浮気相手に捕らえられここに閉じこめられたらしい。
生まれ変わりを皮肉った、考えてみればちょっとコミカルな作品。
最後の花束
1) 当時僕は、ひとつ年上の絵梨花と同棲していた。しかし僕は不良の三上も要請を断れず、三上の絵梨花を襲わせた。その結果絵梨花は顔に大きな火傷をおった。
2) 私はとうとう高田耕平にプロポーズされた。お店の山根さんはそうした私の面倒を本当によく見てくれる。ところが私に妙な匿名の贈り物が届くようになった。白い花束、安物のカフスとタイピン、蝶ネクタイ、使い捨てのパイプに靴下…。
読者に登場人物を男に思わせ、実はどんでん返しで女でした、という手法は他の作品でも見られる。
花盗人
七歳も年下の男に桜の枝をプレゼントされただけで結婚した女。しかし結婚後彼は何もしてくれない。金銭的にも、日常の仕事もすべて私の仕事、一体結婚生活に何の意味があるのだろう。そういった絶望感のはてで女は突然切れた…。薬缶と同じ発想。

020225