カッパ・ノベルズ
それぞれ異なった超能力を持つ三人の女性が、その能力故にさまざまな人生の試練に直面するという短編集。「能力」というものは、必ず便利さや楽しさと背中合わせに、厳しさやつらさを持っているという作者独自の考え方が面白い。
朽ちてゆくまで
麻生智子は八歳の時に交通事故で、両親を失ったが、自身は記憶喪失になりながら奇跡的に助かった。今度は、その後養ってくれていた祖母が死んで、ひとりぼっちになった。祖母が隠し持っていたビデオフィルムを見るうちに、あの事故以前にはたぐいまれな予知能力を持っており、それが両親を苦しめていたことを発見する。言いようもない怒りと悲しみに駆られ、テープを積み上げて自宅に放火、焼死かと思われたが奇跡的に救われた。意識が戻ったとき、彼女は予知の能力も戻ったことを認識し、これから生きて行くことだけを考えようと心に誓う。
繙祭
多田一樹の妹で女子高生の雪江が、不良グループに乱暴され、溺死体となって発見された。復讐を誓う一樹の前に淳子があらわれた。彼女は「私がお役に立ちます。」と言って目の前のキャンドルに火をつけて見せた。駐車場にあるベンツを燃え上がらせて見せた。失敗には終わったが、犯人親子を燃え上がらせて見せる。躊躇する一樹に「私は装填された一丁の銃。あなたの元を去るから、新聞を見ていて。」と言い残し消える。そしてある日、犯人等四人焼死の報道。しかし彼女自身も我と我が身を焼いてしまったのだろうか。
鳩笛草
城南署捜査課の本田貴子には人の心を読める透視能力があり、そのことが捜査に大きな貢献をしてきた。幼稚園に叔母と称する女が現れ、区議会議員小坂の娘みちるを連れ去ったまま、消えてしまった。「営利誘拐!責任はあなただ」と担任にせまる小坂の母。そして自宅には一億円の要求があったという。しかし夫人にあったところ「あの女死んでしまえ、・・・あんな女がみちるの母だなんて」と言う声が聞こえてきた。連れ去ったのは、実の母親ではないか。みちるはホテルであっさりと発見され、事件は解決する。しかし、彼女から透視能力が今じょじょに失われて行こうとしている。彼女は能力が消えた後も生きて行ける職場を求めて転勤を願い出る。