秘めた絆   夏樹 静子

角川文庫

結婚して十三年、子は授からなかったが、野々村珠子は穏やかな結婚生活が続けていた。ところが、突然の来訪者によって一変した。夫康平の秘書の浅井薫が妊娠しており、康平の子供を生む、というのだ。

ところがそれから約半年後、またしても予想だにしないことが起こった。珠子自身が妊娠したのである。やがて薫に暁誕生、珠子には純一誕生。

五年後、二人は幼稚園。しかし純一は左利きの兆候を見せたり、音楽に興味を示さなかったり、どうも康平と似ていない。康平もそのことを気にしている様子。

実は浅井薫から妊娠を告げられた直後、珠子は妻子ある新聞記者高見逸人と親しくなった。彼女自身、純一が康平の子か、逸人の子か自身がないのである。

一方浅井薫には新しい結婚話が持ち上がった。しかも康平の来訪が間遠になるにつれて暁が彼になつかなくなった。そこで康平に別れ話を持ちかけたがなかなか承知してくれず、悩んでいる。

心配がこうじた夫の康平は暁、純一との親子関係を医学的に調べてもらう、と言い出した。検査をするのは野々村の親友の羽沢医師。現代医学では詳しく行えば99%以上の確率で親子であるかいなかを鑑定できるという。

珠子と純一にとって運命のときが近づいてきた。同じことが浅井母息子についても言えた。血液鑑定には母息子が赴き、康平は別の機会に検査をおこなう。両母息子と羽沢医師は面識がない。そんなとき、薫がウルトラC級の提案を珠子におこなった・・・・。

男と女、親と子をつなぐものは何なのか、を考えさせる書である。女たちの共同戦線という趣向はポワロー・ナルスジャックの「悪魔のような女たち」を思い起こさせた。

020829