双葉文庫
内憂外患にゆれる1890年代の大清帝国、西太后が支配するラストエンペラーの世界。日本の横浜からやってきたイギリスの名探偵ホック氏をイギリス総領事館付武官ホイットニー氏が迎え、彼がワトソン役になるという舞台設定に感心する。これに肥満体だが、武芸の達人張志源警補が加わり三人で、モリアーテイと中国側の悪の組織青パンに、秘宝をめぐって対決する。夢と旅情があふれ、楽しい作品でもちろんホームズもののもじりである。
物語は四部からなり、オムニバス的な展開である。第一部では、上海のホテルで、インドで茶園を経営するイギリス商人トレヴァー氏が、毒物を注射され死亡、あたりには巨大なさそりが徘徊していた。張警補の指摘で、盗まれた朝廷の秘宝龍眼池なる黄金の硯をめぐっての争いとわかり、三人は取り戻しに成功する。
第二部は回収した硯を警護して、北京紫禁城におもむき、西太后に謁見報告する。しかし宝物殿の警備責任者で硬骨漢の沈太監が、爆発物を仕込んだ筆から発射された吹き矢によって殺される。密室犯罪であったが、ホック氏は小男の犯人が、兵馬桶の中に潜んで蔵に入り込み、犯行に及んだことを指摘する。
第三部、三人は、犯人の背後にいる雑技団、モリアーテイ、宮廷内の首謀者を追って、八達嶺近くの農村まで押しかける。本部に乗り込み雑技団の少年たちと硬骨漢の呉親子を救うが、敵の攻撃も激しい。ついにモリアーテイの狙撃により呉親子が命を失う。
最終部は、西太后の許可を得て宮廷内を捜査、硝酸が起爆剤となり爆発する酒を贈られたりするが、沈の後任として蔵を管理することになった徐太監が悪の親玉であると発見。しかし、相手の罠にかかり、危機一髪・・・この辺は007そっくり?。以上の話しにホイットニー氏とエヴァンズ嬢の恋がからむという筋書きでほほえましい。
・租界での外国人の事件は、領事館警察が処理する事になっております。(29p)
・筆に吹き矢と火薬が仕込まれていたのです。犯人は灯皿に筆をかざすと、筆軸の上方から火薬の爆発推進によって矢が飛び出すというわけです。(126p)
・不用意に栓をあけると糸の先が硝酸の入っている小さな箱を破るのだよ。流れた硝酸が火薬に反応して爆発するという仕掛けだ。(246p)