集英社文庫
おれは、少林寺拳法の達人、日本人で元気な国際浪人、人呼んでラッキー、しかし運を使い果たしてしまった。そんなおれを、シアトルに住むムーニーという老ボクサーが拾ってくれたが、彼は金に困っていた。そんなおり、突然彼は、キラーと呼ばれる29戦全KO勝ちの若いハード・パンチャーから、ラスベガスでの試合を申し込まれ、引き受ける。
実力の差から考えれば、KO負けは必死、下手をしたら過去にキラーと対戦した何人かのボクサーと同様、殺されるかもしれない。なぜこんな試合が組まれたのか。リングで合法的殺人を行い、保険金をとろうとでもいうのか・・・・その線は消えたが、殺人の陰が漂い始める。まず事件を調査していた韓国人弁護士サイラス・キムの死。
気をもむうち、試合は、予定通り行われた。しかも打たれ強く、良く戦ったムーニーは、予想を裏切り3ラウンドまでもった。しかし試合が終わると、匿名で「すぐ荷物をまとめて逃げだせ。」の連絡が入った。半信半疑だったが、おれが、ムーニーと賭金を回収しに悪徳賭屋ペトリオーニを尋ねると、すでに死んでおり、しかも駆けつけた部下のピエトロまで隣のビルから狙撃されて殺されてしまった。
一家でオンボロ車に乗り、逃げ出すが、途中でムーニーの旧友パートも不審な死を遂げていることが分かった。この時になって始めて、ムーニーが事の真相を暴露する。彼はニカラガ戦争の折り、マッカラムという男に雇われて傭兵となった。マッカラムは、CIAから土着の住民を解放軍に仕立て上げて援助を受け、軍服を着替えさせて彼らを射殺し、もう一度敵殲滅の功労金を得る、など悪逆非道の限りを尽くした。ムーニーは、その証拠をテープに収め、組織からの脱退を計った。弱みを握られたマッカラムは、今度の試合でムーニーを殺そうとしたらしいというのだ。
一行は、ついにマッカラムに雇われた昔の傭兵4人組の罠に落ち、石切場で囲まれ危機一髪、しかしそこに助っ人が現れ助けてくれた。ジェシー・ジェームズ・・・・やはり元ムーニーの仲間だった男で、サイラス・キムの元で働いていた。彼は復讐に燃えている。
一行は、テープの送り先で、昔闘士だったが今は隠退してカナダの山奥の「長槍の家」に住むヘレンおばさんを尋ねる。彼女は、孤児たちの世話をしている。しかしマッカラムは既に「長槍の家」を嗅ぎつけ追ってくる。
戦闘開始。おれは、子供たちを避難させるべく、筏に乗せて、望遠鏡片手に戦況を見つめる。敵は多勢、やがてヘレンおばさん、ジェシー、ムーニー等が倒れ、後は「長槍の家」の中に残るオバサンの夫コーミット・ハイドマンのみ。絶望的だ。しかし、降伏の意志を見せたため、マッカラムが一族を引き連れて入って行くと、轟音一発。コーミットが引き寄せておいて爆薬に火をつけたのだ。たった一人車椅子で逃げ出したマッカラムに、おれは有無をいわさず銃をひく。
アドベンチャー小説として非常に面白く、息もつかせず読ませるところはさすがである。ボクシングの話など専門的な会話も洗練されている。作品全体は、ボクシングまでとそれ以降の二部に分けても良いような感じがした。