二人の夫をもつ女   夏樹 静子

講談社文庫

いづれも推理小説らしい作品を集めており、楽しませる。ただ内容、題名等に他の名作を彷彿させるものがあり、それを考えるのも一興か。

あなたに似た子・・・・・ロアルト・ダール「あなたに似た人」

波の告発・・・・・・土屋隆夫「影の告発」?

二人の夫をもつ女・・・・・パトリック・クエンチン「二人の妻をもつ男」

あなたに似た子

人妻の梓若子は、慶田了助と一度だけ関係したことがあるが、それを偶然団地の主婦の一人に見られた。それが元となり味村美恵子等団地の主婦に自分の子勝巳が、ますます慶田の子寛に似てきたとはやされ腐っている。しかし慶田と知り合ったのは勝巳が生まれた後である。そんなところに脅迫状、そして脅迫主の殺害等の事件・・・。子供が似ている理由には、自分と相手の男が関係する以外、もう一つの可能性がある!

波の告発

兄が婚約者と入れ替わりで福岡に赴任した。ところが3日目に婚約者、兄、部下の3人で沖の島に泳ぎに行ったところ、はぐれた兄が水死してしまった。あの水泳のうまい兄が水死などするはずがない!妹は事件の独自調査に乗り出し、睡眠薬を少し多めに飲んで海に入れば確実に溺死することを知った。誰が兄に睡眠薬を飲ませたのか・・・・しかし真相は悲しい結末を彼女にせまる。

二人の夫をもつ女

祥子の41歳の夫梶原啓吉が突然姿を消した!夫の直接の上司里見は本当によく面倒を見てくれた。彼も独身でやがて関係し、結婚を考えるようになった。2年目夫の死体が岩戸山古墳でみつかった。まったくの事故であった。いよい祥子と里美は結婚できることになったのだが、事実をつき合わせると里見は夫の死を前から知っていたらしい。

朝靄が死をつつむ

私の恋人橡時彦を奪って結婚することになった篠島百合子が睡眠薬とガスで死んでいた。篠島には義理の兄、啓一がおり、遺産相続問題が絡んでいるようにも見えた。しかし実際は時彦の起こした殺人事件にからむ自殺であった。私は彼女が死の直前に書いた告白をもらったのだが・・・・・。

ガラスの中の痴態

谷村俊介に強姦された玲子は復習してやろうと考える。自室の向かいのマンションに住む盲目の少女を、谷村に変装した知人に襲わせ、それを新聞記者の深見といっしょにこちらから眺め、記事にしてもらう。しかし深見はこちらの意図を知っていた。

眼鏡を失えば遠景が見えないはずだが、実は眼鏡は素通しでコンタクトレンズをつけていた、というトリックが面白い。

朝は女の亡骸

妹の直子が「鳴らない電話は拒絶のサイン・・・。」なる遺書らしきものを残して首吊り自殺した。直子の婚約者、富井によると、毎日電話をすることになっているが、昨日はこちらからいくら電話をかけてもお話中だった、電話がなかったことを苦に自殺したのではないか、という。その話は姉の美保子に昔の行為を思い出させた。

電話をかけ、すぐにきるが、こちらは受話器はおかない、するとかけられたほうは受話器をおいても第三者がかけると通話中の状態が続く、という特色を利用した犯罪。

幻の罠

酒井美津枝の平穏な生活は近所に高校同級生の谷森葉子が越してきて狂い始めた。3年前、美津枝は警察の訪問を受けた。ある殺人事件を捜査しているが、葉子の主張するアリバイを確認したい、という。しかし美津枝はそのときたまたま同級生のべつの男とあったばかりで、そのことを実直な夫に知られるのがいやで、葉子にはあっていない、と答えてしまった。事件は迷宮入りで終わったが、葉子はうらんでいるに違いない。葉子はなにか私にお返しをしようとしているに違いない、と思う心が美津枝を破滅に導いてゆく。

夜明けまでの恐怖

晃子は自分を捨てて重役令嬢と結婚することにした高津が許せない。自室に友人の和歌子にきてもらい、彼女に自分の代役を勤めてもらうことにし、夜の道を高津のアパートに向かった。しかし途中で足をくじき、他人に顔を見られたことと、高津が留守だったために自室に戻った。すると部屋の中で和歌子がストッキングを首にまきつけられ死んでいた。私のアリバイを確保しなければいけない、と彼女は足をくじいたとき助けてくれた男を求めて再び夜の街に・・・。死体に成りすますところが、クリステイの「そして誰もいなくなった」を彷彿させる。

020822