新潮文庫
新人賞を取ったものの、売れない作家島崎潤一は、宝石店を営む富豪の女性小松原妙子から、失踪した息子淳の生涯について伝記を書いて欲しいと頼まれる。淳の資料はファイルにまとめられて広大な屋敷の一室に保管されており、その資料の読み取りと聞き込み調査を中心に作業が進んで行く。
妙子は昔外人と結婚し淳をもうけたが捨てられた事、その後小松原謙人と再婚したがユキという美しい連れ子がいた。その後謙人は失踪しており、今は母と娘の二人暮らし。一方淳は子供の頃から文章の才能が優れており、推理作家を目指しているが、、協調性がなく、孤独癖が相当強かったらしい。しかも子供時代に、少女連続殺人事件がおきたり、いじめっ子が死体になったり、大学ではライバルの片倉が崖上から転落死したり、自分自身も自殺未遂をはかるなど暗い影がつきまとう。
島崎は調査を進める内に不思議に誰かにつけられたり、同じ調査をしているものがいるらしいことに気づく。さらに屋敷には秘密の地下室があり、誰かが住んでいるようにも見える。淳が行方不明になった直接の理由が分かった。淳とユキが関係したのだったが、実は二人は異母兄弟だったため、妙子が烈火のごとく怒った。すると二人は西湖近くの原生林に逃げ込んだ。その後ユキは帰ってきたが、淳は帰ってこないのだという。島崎は急遽その原生林に向かうが、そこには小松原母子の奸計が待ちかまえていた。
話の順序で言えばこうなるのだが、作者は年譜、インタビュー、小説中小説、モノローグ、そして本文と、五つのスタイルでかき分け、常に読者に謎をかけ、それがとけると又次の謎と言う風に仕掛けてくる。典型的な叙述トリック作品で、だまされる醍醐味がたまらない。
それにしてもこういう作品は一体どうやって書くのだろう。よほど詳細な設計をしておくのか、あるいはできあがった作品を切り刻んで見るのか。私も過去に作った作品をリアレンジして書き直して見たくなった。
990914