生ける屍の死 山口 雅也


創元推理文庫

(第1部 死せる生者たち)
ニューイングランドの片田舎で死者が相次いで蘇る現象が起こっていた。蘇った死者の特色は毒が利かない、痛みを感じない、物が食えない、そのままほっておくと死斑が現れ、腐ってくるから血液を入れ替え、防腐処理を施す、そのくせ意思はある、という。死んだ者が生き返る前提になっているから、誰が死人で誰が生きているのか、ごちゃごちゃになってしまうところが何とも人を食っている。
巨大霊園スマイル霊園の支配人スマイリー・バーリイコーンは死の床にあった。霊園は実質的には息子のジョンが管理していた。ピンクの霊柩車に載ってパンク姿の孫のグリンが、猫顔のチェシャを連れて戻ってきた。遺産の分配に変更の無いことが発表され、ジョンが日本人南賀と組んで新たな事業をすると発表したところへチェシャが棺桶列車にのって突っ込んできた。ドタバタ騒動でお茶会がお開きになるが、グリンはミルクを飲み、自室でスマイリーにもらったチョコレートを食べて死んでしまう。
主人公が死んでもこの物語は終わらない。復活を果たしたグリンは死者であることを隠しながらチェシャと会う。スマイリーも一度死んだ後目を開く。しかし、それもつかの間、今度は安置室にジョンの死体が転がっていた。背中に深々と短剣を刺されて.......。
(第2部 生ける死者たち)
ジョンの殺害現場は黄金眠りの間。昇天の間との間の廊下を見通せる位置にヴィデオが取りつけてあった。マープルタウン署のトレーシー警部が早速解析。画面にはジョン、イザベラ、フェイスマスクが次々に現れる。イザゼベラにはアリバイがあったから犯人はフェイス・マスク?しかし一体誰なのだろう。
そして四つ辻でカーチェイスの末の大事故。ドライバーも同乗者も蘇った幽霊だったりするから、誰が生きているやら、死んだやら。その上トレーシー警部が犯人と断定したジェイムズまで死体で発見されてしまう。
最後にグリンがなぞ解きをする。そもそもジョンは文無しで遺産が欲しかった、ところがスマイリーより先に死んだから、このままではもらえない、だから蘇って生きたふりをする。永遠には生きて行けぬから、生まれ変わりの孫に財産を相続させることにする。終わったら今度は自分で背中に剣をさして死んだことにし、幕引きを試みる。これに赤緑色盲のノーマンがミルクの袋と砒素の袋を間違えて持ってきたためにグリンが死んでしまう事件がからまって、いやはや、常人には理解の難しい事!!
ところでジョンは、最初になぜ殺されたか。。実はスマイリーの死体を、霊園で広く行われているように焼却しようと言い出したから。そんなことをしたら蘇れなくなるじゃない、......犯人はそう心配したのです。なんと西洋的な考え方!

 しかしこの作品は名作で力作、読むことをぜひ薦めたい。
第一に死者が蘇るという前提がすごい。のみならずその前提にたって登場人物(死者)を縦横に活躍させている。たとえば、死んでも遺産は相続したい!外国小説みたいにゾンビダゾー!で暴れれば良いだけじゃない。
第二にセンスあるウイットに富む舞台設定と会話である。読んでいて2分とおかずニヤリとすること請け合い。ピンクの霊柩車なんてそれだけで楽しい。
第三に推理小説で出そうな種をこれでもか、これでもかとふんだんに使っている。
第四に舞台を外国にとって、一家の物語を取っている。日本人の作品として珍しくチャレンジングである。お葬式の歴史、やり方なんかも良く調べてありますね。
参考 夢野久作「ドグラ・マグラ」
  J.B.オサリヴァン「憑かれた死」
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