狗神       坂東 眞砂子


角川文庫

坊之宮美希の生活はあまりにも静かだ。土佐の山奥の村、尾峰で、四十一歳の今にいたるまで独身を通している。実家で母親と兄家族と同居し、毎日和紙漉きの作業に専念している。
彼女を土居誠一郎が何かと慕っていた。しかし土居の母親は誠一郎と美希の結婚に強硬に反対していた。坊之宮家が狗神筋だ、というのである。
近衛天皇の御世に源頼政は宮中を不安に陥れた怪物鵺を退治した。頼政は鵺をばらばらにして、うつぼ舟にいれて海に流した。それが徳島の海辺に流れてきて、手足の部分が狗神筋の先祖になったという。先祖は、狗神様のお供をして夜毎に悪い夢をばらまいたという。
美希は、姪の理香の通う池野中学校に新しく赴任した二十一歳の奴田原晃とであった。やがて晃と結ばれた。子が宿り、年の差を乗り越えて結婚することになった。しかしこれが血の悲劇の幕を開けることになった。不気味な胎動をはじめる狗神、村人を襲う漆黒の闇と悪。暗い過去が次第に明らかになり、被害者が出る。最後に村人は山火事に事寄せて坊之宮一家の抹殺を狙う!
伝説に縛られる村とそこにうごめく人々の心の深淵に潜む恐怖を描いた、という所なのだろうか。ただ、結末に救いがなく、何かやりきれなかった。
010611