角川文庫
わたしタカミは21歳、浅草置屋の娘で某女子大学文学部に身を置きながら、水商売して金を稼ぎ、暴走族の仲間入りをしている。ブンガクさんは私のお店にくるお客の中では一番若い。ナントカ文学賞をとって、その作品がベストセラーになったとか、でも彼はヤクが切れると途端におかしくなる。彼のもつフェアレデイZ改に乗って深夜の中央高速をぶっ飛ばす。
H.M.C=ヘヴイ・メタル・カフェ…・・レコードすらかけない元ライブハウス。ここは毎夜社会不適合の若者たちがバイクに乗って集まる。元自衛官の右翼、元やくざのヤー、高校中退したバイク狂のバンク、ミュージシアンのオッサンとベース、ベースの恋人クリア、一癖も二癖もある連中ばかり。ポーカーをやって時間をつぶし、シグナル・グランプリに熱中し、幅寄せしたカップルに十分な落とし前をつける…そんな連中だ。私たちは彼らと共にH.M.Cを後にし、北海道に向かった。
高尾、大月、勝沼から中央自動車道、、長野自動車道、糸魚川、新潟…・私はブンガクさんやオッサンと適当にやる。若い男が車をバンクに競い掛けてきたが、橋桁に正面衝突しやがった。
湯殿山、恐山、フェリーで北海道、大沼トンネル、この旅行にくる前にブンガクさんは大量のヤクの結晶を買った。私はパンテイストッキングで腕をしばり、うってやった。根室半島、オッサンの妻妖子さんの話、ヤーの人を殺した話、そして知床峠へ。
キャンプ場でバンクが私をトイレに連れ込んで関係しようとしたとき、バンクのひとみに狂気を感じた。私を追ったバイクの後輪がすべり、バイクは炎上、バンクは放り出され、苦しげな様子。死ぬなら道連れにとブンガクさんにヤクをうたれたのだ。バンクを介抱する一方、オッサンの指示で、寝袋に入ったブンガクさんをガムテープでぐるぐる巻き。これがヤクをやめさせるには一番いいんだ。問題も日本最北端の相泊温泉についたころには解決、所詮クスリをやるのもオートバイで暴走するのも現実からの逃避と認識し、みんなはオッサンを中心に、ブンガクさんは小説を書いて人生の再出発を計ろうと決意する。
旅の進行に合わせて、物語を書き進めながら、自然に彼らの過去、考え方、人間像を描き出して行くテクニックが素晴らしい。参考になった。若者たちはひどくエネルギッシュ、行動は過激、一見虚無的で無軌道に振る舞っているように見えるが、それぞれにクールで何かを渇望し、バイクをぶっ飛ばす。そうした爽快感みたいなものが、時に詩的な文章と、多彩なオートバイ用語を通して感じられ、時々どきっとするような真理が顔をだす…・その格好良さがたまらない。バイクを愛する人に勧めたい。(1990 35)
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