帰ってきた探偵たち 高木 彬光


光文社文庫


朱の奇跡
近松検事シリーズ。塚本久雄は会社の印鑑を持ち出し、約束手形を発行したとして逮捕されるが無実を叫び続ける。実は押された社印の上に油紙をのせ、こすると朱肉が脂に吸収されて、うらがえしにうつる。これを約束手形におせば印鑑の転写ができる原理を応用した犯罪に巻き込まれたものだった。

殺意の審判
やはり近松検事物。死亡時刻は胃の中の食物の消化具合、および、死後硬直度によって判断されるが一般には前者が優先される。これはあらかじめ殺そうとする被害者に寿司を食わせ、犯行時に再び寿司を取って証拠として残し、死亡時刻の判断を狂わせようとした犯罪。

妄想の殺人
検事霧島三郎シリーズ。折れ合いの悪い妻を殺した、と何度も訴えるおかしな男。警官も彼の言動を信用しなくなっていた。ところが本当に彼のいうとおり、女が殺されたが妻ではなく会社の社長の女。実は夫婦が社長の女を巻き込んで会社の金を横領したが、あとで邪魔になって殺したもの。

・死後1時間くらいの死体と、三、四時間経過したした死体とでは、ベテランの刑事たちには一眼でわかるだけの違いがあるのですね。(92P)

怪盗七面相
私立探偵神津恭介シリーズ。人気絶頂の歌手赤木シズ子がホテルで毒を飲まされて死の瀬戸際。運転手の牛島直紀に化けて宝石をねらう怪人七面相。怪人二重面相のスタイルを真似ているところが面白い。

悪魔の火祭り
私立探偵大前田英策シリーズ。増永栄子が資産家神田の元に嫁いだ姉三津子が結婚後全身に刺青を彫り、今離婚したいと言っていると相談に来る。その栄子が東京で、三津子がねぶた祭りの青森でそれぞれ祭りの花笠を身につけ、体を刺されて死んでいた。そして栄子の恋人、小岸佳仁の登場。背景にやみドル売買。ねぶた祭りで人は仮装し、化人になる。花笠は化人に通じ、化人は佳仁に通ずる・・・。

・私立探偵が警官に勝つ・・・(1)警察が何かの都合で扱えないような事件にぶつかる(2)警察の先手を打ってその出動前に事件を解決する(3)大組織の活動には当然生ずるような盲点を突いてゆく(201P)