からみ合い          南條 範夫


徳間文庫

東京精密機械KKの河原社長は、癌のためあと半年の命と宣告された。その膨大な財産の唯一の相続人は、年若い妻里枝だったが、その彼女が遺言状の有無を調べていると知り、意地悪な計画を立てる。それは過去一度も思い出したことのない4人の女が生んだ子供たちを探し出し、相続人に加えようと言うのだ。
里枝は、藤井秘書課長と出来ていたが、7才の女の子のみを探しだし、二人はいないことにし、男の子は見つけても社長の気に入らせないようにしよう、そして自分は後見人になって全財産を掌握しようと考える。しかしその女の子だけが死んでいたために、藤井との間に出来た子ゆき子をみがわりにしようと策動し、失敗。
美貌の青年井本修三は、片岡美香子をさがしだすが、彼は女癖が悪く、美香子、ゆきづりの和子、さらに里枝と関係し、それが露見して失脚、美香子は自殺してしまう。
吉田弁護士は、社会事業団体を作らせ、河原に遺産を寄付させ、自分がそこの長に収まろうと言う腹だが不発、陸軍中将を祖父にもつ神尾真弓を探し出すが、妹を姉と誤認、妹は妹で、これをチャンスと姉を殺し、なりすまそうとし、失敗。
秘書のやす子は、成宗定夫を探すが、他のグループの策謀にあい、失格、河原社長は子と認めない。ところが社長は、その間になんとやす子と関係が出来てしまう。
最後にやす子が、妊娠した事がわかり、河原は里枝、やす子、やす子の子に財産を三等分すると遺言し死ぬが、1年後に以外な結論が待っていた・・・・。

死の直前の河原社長の発言が、関係者の欲望とからんでとんだどたばた劇を引き起こすところが実に興味深い。考えられたブラック・ユーモアということも出来るが、私は河原社長の気持ちを通して作者の人生観が述べられていることに注目したい。

・(遺産が)、誰の手に、どれだけわたろうと、死んでしまう自分には、何の意味もなくなることだ。それは、はっきり分かっていた。が、生きている限り、今や、それより大きな関心事はないのだ。(41P)
・社会事業の団体・・・・寄付された金の大部分は、その団体の役職員である老朽、無能な人間どもの生活を維持するために使われるのだ(42p)
・人はいかに老年に達しても、決して、実際に生涯の最後の行為となったものを、そのときにおいて、それが最後の行為だとは認めない。今、可能だったのだから、また、いつか、それが可能だろうと考えるからだ・・・・生きている限り、最後の行為について書かない。(165p)
・遺書を自分が自殺する代筆として書かせる(193p)
・死亡証明書をもらい、その名が、まり枝になっているのに驚かされた。(214p)