文春文庫
休職中の刑事、本間俊介は、遠縁の男に「関根彰子という女性と婚約したが、一緒にクレジットカードを作ろうとしたところ、彼女が、サラ金のブラックリストに載っていることが分かった。彼女に説明を求めたところ、消えてしまった。探し出して欲しい。」と頼まれる。
彼女の会社に提出していた経歴は、すべてでたらめ、栃木にいたたった一人の縁者の母親は二年前に階段から落ちて死んでいた。そんな中で調べを進めると、なんと、関根彰子は、新橋蕎子なる女性の入れ替わりらしいと分かった。
実は彼女の家も、両親が住宅ローンで失敗し、高利の金を借りまくったあげく、離散。彼女はある通信販売会社に勤めたが、そこにも借金取りは押し掛けてきた。通信販売会社ではお客からいろいろアンケートを取っていたが、困った彼女は、その廃棄処分にするデータを借り受け、自分が成り代わろうとする人物を物色した。そして関根彰子を見つけたのだが、あとから本人が現れては困るから、バラバラ殺人により処分してしまった。
そういった新橋蕎子の過去を主人公が、丹念に洗い出して行く過程が非常に丁寧でよく書けている。鮎川哲也の鬼貫刑事シリーズを思わせるしつこさである。そして最後に、なりすまそうとした人物は、関根彰子だけではなかったはずだ、今なりすましが発覚したのなら、別の候補の所に押し掛けるに違いないと考え、待ち伏せる・・・・。
松本清張などのの社会派作家の作品のように、カード社会と自己破産という現代の社会問題をうまく小説の中に取り入れ、緻密な取材と相まって素晴らしい推理小説になっている。単なる勧善懲悪でなく、作者は登場人物と等身大の見方で物事を見ており、感動させ、泣かせ、考えさせる部分が多く、人に読むことを薦めたい作品である。
・雇用保険は、すべてコンピュータによるオンラインになっており、被保険者証につけられた番号を入力すると、以前の雇用記録がすぐに照会できるようになっている。新入社員にかぎらず、転職しても、定年退職しても同じことだ。(66p)
・戸籍謄本は「本人」ですって言えば、簡単にとれるのねえ。(128p)
・偽の彰子が取るべき行動・・・国民健康保険、健康保険等(137p)
・戸籍の分籍(148p)
・クレジット・・・昭和三十五年、丸井
消費者信用・・・(1)販売信用(2)消費者金融
販売信用・・・・(1)割賦方式(2)非割賦方式・・・(1)個品(2)カード
平成元年、両方併せて六十兆円に近い。
クレジットカード・・・(1)銀行系(2)信販系(3)流通系
ショッピングからキャッシングへ・・・・販売信用から消費者金融へ(180p前後)
・自己破産、サラ金規制法、棄民・・・原発の掃除、オウム(201p)
・情報破産・・・・情報に個人が浮かれる(261p)
・マンションに飼っている犬を殺す話(403p)
・たどり着けそうでつけない夢・・・リッチな生活(サラ金等)、バラ色の人生(美容整形出世)、強力な予備校(受験勉強)、幸せな家庭生活(マイホーム)(413p)
・蛇はなぜ脱皮する・・・足があるほうがいい、足があるほうが幸せだって思うから。・・・・脱皮の仕方をおしえ、足があるように映る鏡を売りつける賢い蛇もいる(415p)
・葬式の時の殺人相談(478p)
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