徳間文庫
モザンヴィックのローレンソ・マルケスで、白雲丸はケープタウンへの突然の出帆命令と、不振な大型木箱の輸送命令を受けた。そして船積指図書と木箱の中身の消失に、一等航海士稲村雅史は、不吉な予感を覚えた。
南アフリカでは保安局のキース・ケインが黒人開放運動を徹底的に弾圧していた。解放戦線に押される隣国モザンヴィクの情報局本部ロザリオ・アンタレスは、ケインあての一通の書類を渉外課のマリセー・サントスに依頼するが、
ケープタウンで解放軍の手に落ちる。
一方ケープタウンについた稲村は、酒場で美貌の混血娼婦リンを助け、リンから密航を依頼される。ケープタウンで鉛の塊を積み込まれ、船をローレンソ・マルケス沖で待つスペード艦隊に渡すよう指図を受け、同時にキース・ケインとロザリオ・パシカシオ(実はアンタレス)なる二人の男の移送を頼まれる。そして出港時十数人の混血荷役が船に乗り込んだらしい。
船は急き立てられるようにしてケープタウンを出港、サイクロン荒れ狂う南インド洋に突っ込む。稲村は鉛の塊を検査し、中に金塊が入っていることを発見、リンからキース・ケーンの素性を聞き、事件の流れをつかんだ。アパルトヘイト政策を実施し、黒人を牛馬のように使う南アフリカは、隣国モザンヴィクが黒人勢力の手に落ちることを恐れ、スペード艦隊に武器を用意させ、金塊はその代金に当たるものだ。さらに金塊を輸送し、キース・ケインが乗り込むとあれば必ず黒人解放勢力が襲ってくるはずだから、密かに兵を忍び込ませ、この機会に彼らを殲滅する・・・・。
話は目論見どおり進み、黒人解放勢力は壊滅、船はキース・ケイン一味の支配するところとなったが、一瞬の隙をつき、稲村は副将エドワード・シュミットを自室に連れ込む。室にはリンが45口径片手に待ち伏せており、姉の仇とエドワードを射殺してしまう。銃声に驚いたキースとその手先はドアの外で手をこまねく。稲村とリンは床をトーチで焼き切って密室からの脱出を敢行・・・・・。しかしリンの仕掛けた時限爆弾の動作時刻が刻一刻迫ってくる・・・・・。
すばらしい冒険小説で日本人がよくこんな小説を書けたものと感心する。実際アリステア・マクレーンの「女王陛下のユリシーズ号」などとくらべて、ロマンがあり、アパルトヘイタ政策に対する強烈な批判も加わってずっと面白い、と思った。後書きによれば著者は、自身が一等航海士とのことでなるほどと思う。5年くらいでこの手の作品をやめ、伝記小説に転換したというが残念に思う。
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