新潮文庫
阿刀田の作品は幽霊的な話と殺人劇にわけられる様に思う。私は後者が好きだ。この書で茜色の空、女に向かない仕事、標題作の危険な童話などがご推薦。
茜色の空
弟が商品相場で失敗し、金に困っていた。四十年ぶりにあった昔の友はその金を融資してやるという。私のする事はただ一つ、おれあいの悪い彼の奥さんの眠っている時をみつけ、ほんの一本注射をうつだけ・・・・。
夜の散歩人
私は陣内千恵子。刑事がJCの頭文字を持つ独身女性が殺されているから、注意してほしいと忠告。キリストの再来と自分自身を信じる私は、JCの頭文字をもつ偽物の再来者を許しておく訳には行かない。
涼しい目
軽井沢、人里離れた酔いどれ荘に妻と行くとき、私は、若い時に妻に内緒でここで三日過ごした女のことを思い出す。彼女はその後死んだという。ところが夢か、うつつかその女が尋ねてきて再びの夜。荘を去るとき管理人がそっと言う。「あの人はそのままにしておいていいんですか。」
法則のある死体たち
朝から次々とでくわす死体。金魚、蛙、蛇、鳥、猫、猿・・・。そして人間。ところが朝の金魚は生きていた。こいつが生き、もう一つが死んだ・・・。訳の分からない恐怖。
戻り道
老境に入った私の日課は散歩。昔の事が次々思い出される。「駄目じゃない、おじいちゃん」とトルコ嬢、太鼓の音、神社の太鼓におみくじ、釣り針にかかった大鯰、衛生博覧会、高島田の女の死体・・・・あわてて元来た道を引き返す。また、祭り、鯰。百日紅の木を登って家に入るとまたあの女・・・。イメージの小説である。
女に向かない仕事
怠け者、何の能力もない女と分かって彼の結婚は大失敗。あまり汚いから、いつの間にかゴミを出す仕事は彼の仕事に・・・。そんなある日、ついに爆発、大喧嘩。妻は動かなくなった。バスルームに並んだ沢山のごみ袋を見て、やっぱりこれを運ぶのは男の仕事だ!
窓の灯
東北地方に出張し、知り合った女と逢い引きの約束をしたが、その女は事故死した。上野に戻り酒場から私のアパートを眺めると私の部屋に灯かりが点いている。側の男と身の上話し。男が「じゃあ、やめましょうか。」といいながら去ってゆく。私の部屋の灯かりはいつのまにか消え、人はいない。運命を操る神が存在するのだろうか。
越前みやげ
東尋坊で今にも自殺しそうな女に知り合う。なんとなく気が合い、互いに大きな壷を土産に帰る。女のマンションに香の臭い。やがてテレビがその女が亭主を殺し、死体をあの壷にセメント漬けにして逃亡しているニュースを告げる・・・・。
蛇
昔知り合った蛇の好きな女は言った。「私は長くない。私が死んでも今日2月22日だけは覚えておいてほしい。」それから数年、私はその話しを忘れてまた見知らぬ女と情事にふける。テーブルの上のネクタイが蛇が鎌首を持ち上げるように動いたようだ。
危険な童話
あのミカちゃんはかわいい賢い子。しかし母親は金棒曳き、放送局だ。ミカちゃんは学校で赤頭巾役をやるとうれしそう。そのミカちゃんに浮気の証拠を見られたかも知れない。「おばちゃまの目はどうして、そんなに怖く光っているの?。」「それは、おまえを殺すためだよ。」