危険な殺人者         西村 京太郎


角川文庫

短編を書く時のお手本になるような作品がそろっているように思う。テーマが明快でそれが簡潔な力強い文章で書かれている。宮部みゆきの「我らが隣人の犯罪」は「危険な遊び」がヒントになったのではないか、と思った。子供の小さな冒険がとんでもない犯罪につながって行く。
病める心
ベテラン新聞記者田島は、自社紙面で「七歳の子供が自殺」という妙な記事を発見した。「ママ、サヨナラ」と書かれた遺書と一枚の飛行機の絵。田島は何かある、と確信し、強引な取材を通じて母親城戸順子と会社の上司の道ならぬ関係を発見した。順子が自殺した。
いかさま
マージャンにのめり込んだ小さな商事会社のサラリーマン松崎は、都内のあるマージャン屋でプロらしい相手を見つけ、挑戦する。結果は悪くは無かったが、後で考えるとなぜか発が一度も手に来たことが無かったことに気がついた。もう一度挑戦すると今度は中がこない。しつこく彼らにさらなる挑戦をすると危うく殺されかかった。
危険な遊び
ボクたちは柿を盗みに「前田義照」という表札のある家に忍び込んだが、主人らしい人がたき火をしていた。燃やそうとされていたオルゴールと靴を見つけ、それを拾い出して売り、お小遣いを得た。ところが警察から呼び出され、怒られてしまった。しかしお姉さんは、前田さんが「妻の大事にしているものを燃す訳がない。」と嘘をついていることに疑問を持った。彼の妻はどうしているのだろうか。
鍵穴の中の殺人
母一人子一人の相川健一は受験期だったが、隣の水商売らしい女の夜毎の嬌声が気になって仕方がない。とうとう母親の持つアパートのマスターキーを持ち出し、侵入し、下着を盗むなどいたずらをする。ところがある日忍び込むと彼女が殺されていた。そして警察の聴取、警察はすべて分かっていて「マスターキーを使える人間は限られている、君がやったんだろう。」とせめる。
目撃者
無線タクシーの運転手鈴木は、客を上野毛まで送ったが、立ち去ろうとすると背後で悲鳴、ふりむくと今おろした客が、路上にうずくまり、黒い人影が走り去るのが見えた。なぜタクシーが走り去るまで待たなかったか、警察は疑問に思った。五日後、目撃者の鈴木が殺された。
でっちあげ
捜査一課の高田刑事は銀座のホステス広子と浅からぬ縁だったが、三谷千津子との婚約が決まった。何とか広子と別れたいが、広子は承知しない。女出入りの激しいテレビタレントが自宅マンションで刺殺された。彼は広子を犯人に仕立てようと、証拠の品を現場にそっとおいたが…。
硝子の遺書
私は姉の死の電報を受け取って、急ぎ船をおり、自宅に戻った。薬屋をやっている姉は近所で評判の悪い婆さんに栄養剤「ビタホルン」を売ったが、その中に砒素がはいっており、婆さんは死んでしまった。警察から疑われ、私が義兄との結婚祝いに上げた硝子の人形を壊し、それで手を切って自殺したのだという。姉は自殺などするはずがない、と信じた私は、婆さんが栄養剤を買いに来たときちょうど品切れで奥から自分用にとっておいたものを売ったことを発見した!
010428