木村家の人びと        谷 俊彦


新潮社ハードカバー

何でも金で考える木村肇、一癖も二癖もある駱駝市役所の人々、そしてカンニングに全能力を捧げる木村見次、彼らがおりなすどたばた劇は抱腹絶倒確実。しかし読み終わって見ると何か人生の本質みたいなものを感じさせる…・そこがこの作品集の良さである。
もう少し丁寧に書いて長編にしても面白いな、と感じた。なお推理小説という点からは駱駝市役所の人びとがそれらしい。
木村家の人びと
木村肇は富士野食品資料編纂室に勤務するが、会社の仕事は全くしない。もっぱら内職に精を出している。白タク業、弁当配達業、大学講義ノートコピー業、老人を使っての新聞配達、その辺はまだ良いが、女高生を使っての売春斡旋、ラブホテルから出てきた上司の写真を使って強請り。ある時、張り込みをしていると、ラブホテルから出てきた妻を発見してしまった。その夜、木村は妻に「あの男から慰謝料を取ろう。」と持ちかける。ところが翌日彼は売春斡旋等の容疑であっさり逮捕されてしまった。
留置場で彼は考える。「我が木村家の仕事はどうなったか。夜逃げでもしたか。それにしても警察はよく調べている。密告したのは誰だろう。」
駱駝市役所の人びと
駱駝市役所の名物と言えば木村響子、おっと今日から緑川響子、別名生理休暇。企画課勤務のキャリアの美女で、法律に明るく、地方公務員福利システムを利用しまくる。半年ごとに離婚、結婚を繰り返し、祝い金をかすめ取るなど。
その上司が蒲田佐助。二言目には地域社会の活性化を口走るので活性化と呼ばれている。その蒲田が真夜中女子トイレで扼殺された。現場に木村の万年筆が落ちていた。
しかし熱血漢で独身の庶務係長鈴木健一等が調べると背後には土建屋上がりの市長ハゲワシこと小山大造と若きエリート助役で次期市長の座をねらう自治省こと伊集院進の対決があった。両者は互いに女子トイレに盗聴器を忍ばせて情報を集める。
東京都大学の人びと
木村見次を中心とする一大カンニング集団。彼らに立ちふさがるのは右田助教授。ついに右田が木村をつかまえて、こんこんと説教し、「これからしないと約束するな。」と迫る。ところが木村は「必ずや完璧なカンニングをしてAをとることをお約束します。もし先生がそれを現行犯で押さえることができたら退学にしてください。」と高らかに宣戦布告!
期末試験当日、右田は絶対に捕まえてやると張り切る。ところが会場に村雨教授が飛び込んできて「君は富岡先生と南田先生の不倫を理学部長に報告するというのか。」、鈴村教授が「今、親御さんから「君が女生徒にいやらしいことをする。」との手紙を受け取った。」あげく「先生の実験室から火がでました。」!しかも右田が席を離した隙に、事務の蓑田麻衣子が先生に頼まれたからと、公式集を配り始める。
それでも絶対にカンニングをした証拠があるはずと、右田は木村を裸にして調べるが…・。
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