カッパ・ノベルズ
5年前別れた妻加納通子から吉敷刑事に、「北海道に行く、私を追わないで。」と、ただならぬ気配の電話あった。ところが翌日の青森署からの捜査協力依頼はゆうづる九号で刺し殺された女の身元を洗うことだった。何と女の服装は、前日通子を見送ったものとまったく同じだった。
吉敷が通子を追って釧路に行くと旧友牛越刑事に遭遇、何と通子は殺人犯として追われているという。
原生林に川を挟んで立つ三枚羽根の風車の形をした三つのマンション、一号棟五階の通子の部屋で、二号棟と三号棟に住む藤倉兄弟の二人の妻の刺殺死体が発見され、しかも通子がいなくなったと言うのだ。二人の妻に多額の保険金がかけられ、兄弟が金に困っていたことから、吉敷は彼らによる保険金目当ての殺人、通子はその犯人に仕立てられたと読む。
しかし犯行当時、藤倉兄弟は二号棟、三号棟にいた、一号棟に入った様子はないという。証言したのは一号棟一階の管理人で、彼は学生四人を読んで麻雀をしていた。川で隔てられている上、入り口は他になく完全な密室殺人だ。
不思議なことに学生の一人小田は窓越しに鎧武者の幽霊を見、さらに川のそばにある義経にまつわる夜泣き石がすすり泣くのを聞いたという。この殺人は義経の北海道行き伝説に関係があるのか!はじめは相手にしなかった道警だが、反射的に撮った写真に本当に鎧武者が写っていつとあって驚く。
道警では状況証拠から通子に逮捕状を出すという。吉敷は牛越に頼んで、逮捕の日を2日延ばしてもらう。通子を助け、自分の仮説をを証明しようと、必死に行方を追い求める。しかし藤倉兄弟と思われる人物に雪の中で襲われ重傷、高熱が出て動くのも困難!しかしここでくじけるわけには行かない。わずかな証拠を頼りに雪の北海道の湖周辺の宿を訪ね歩く。そしてついに弟子屈で兄弟に殺されようとする通子を発見!
それにしても現実性はともかく豪快なトリックは実に楽しい。死体を傷つけぬよう鎧にいれ、マンションの真ん中の角を支点として、むこうの角からこちらの角に振り子のように鎧を移送する、なんて誰が思いつくのだろう。(参考「御手洗潔の挨拶」)
島田の作品では、主として私立探偵御手洗潔と吉敷竹史が探偵役を務めるが、前者が天才肌なのに対し、こちらはずいぶんと人間くさく弱いところがある。しかしそれだけに親しみがある。特にこの作品にはそれが良く出ており、ストーリーとしても魅力に富んでいると思う。
また通子が強請られる原因となった、畑に落ちていた瓶の中味を子供に飲ませたところ、死んでしまった、という話も面白い。
(1985)
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