角川文庫
「やめて、よして、さわらないで…。ビビデバビデブ!」
へその下はとんがらしだった。胡椒もはいった。パプリカも加わった。見られていることは分かっている。ジッパーをおろす。盛り上がった陰茎にひっかかってなかなかうまく行かぬ。「何をもたもたしているの!」等と言わぬところが利子の奥床しいところだ。
「あううううう!もっと奥へ、強く、深く……・、ビビデバビデブ!」
「うおーーーーーーーーーー!」
後の方はおれでも利子のよがり声でもないぞ。
それから三十分、おれは精力を使い果たしてぐったり。夏の夜の、井の頭公園は素敵だなあ。あれ、まだ木の上にいやがる。
「これでもくらえ。」使い終わったコンドーさんをテイッシュにくるんでそいつのいそうな木の上に投げつけた。どさり、そいつが俺たちのそばに落ちてきた。「きゃっ!」と利子がおれにすがりつく。恐る恐る触るともう冷たい!死んでいる。暗闇が突然照らされた。別の男が寄ってきて覗き込む。もう一人覗きがいたとは気づかなかった。
「こらあ、金語桜だ!」
「金語桜?」
「そうだ、この辺でのさばっている悪徳私立探偵薬師丸金語桜だ!おまえ達を殺人現行犯で逮捕する!」
「あんた、誰?警察?」
「この紋所、じゃなかった!この手帳が目に入らぬか。泣く子も黙る悪徳警官武蔵野警察署野間刑事!」
「のろま刑事?」
「違う!野間、野間だ!」
「僕たち関係ない。やってただけ。この人、木の上から僕たち覗いてた。コンドーさん投げたら落ちてきた!ほんと、インデイアン嘘言わない。」
「うるさい!警察がそう思えば、おまえらが犯人!。とにかく逮捕する。」
「説得力がない!」
「ある、ある。猥褻者陳列罪!」
利子があわててパンテイをずりあへる。おれはしぼんだ陰茎をおしこむ。
「いやなら警察に協力しろ。犯人を捕まえろ!こんなチンキな探偵殺しに大野間刑事殿がかかずらわって要られるか。」
「分かった!分かった!」
以上はすべて湖南の創作である。大森望氏いうところの文豪・いしかわじゅんの筆になるものではない。文豪はこんなチンキな文章は書かない!
ところで最初にこんな駄文を載せたのは正直この作品の評をどう書いて良いのか分からないからである。それほど下品で低俗、ハードボイルドだから良いかも知れぬが、大した考察もなくいきなり犯人を言い当てる単純さなどどうもなじみにくい。同じ時代を先取りした風のパロデイ文章?でも、小林信彦などとかなり違う。あちらはまだ節制がある。
しかし野間刑事との掛け合い、ナウイ文章、猛烈すぎるセックス描写とホラ、捨て難い魅力があることもまた事実である。「文豪」かどうかは知らぬけれど。あなたが独身で、ソープが好きな若人なら、あるいは会社の女の子のスーツ姿を見て、夜の彼女を想像する中年おじんであるなら、一読をお勧めする。ただし、娘と彼女とおふくろには読ませないほうが良いのでは?
8編あり、どの話も吉祥寺に探偵事務所を開く薬師丸金悟桜が殺人事件に遭遇、同期で武蔵野署の刑事を勤める野間から「犯人として逮捕する。」と驚かされる。断ると微罪をあげられ「警察がそう思えば逮捕できる。」などと驚かされて事件究明にむかう。最後は突然多分こう考えると事件を解決してしまう、というスタイルを取っている。
吉祥寺にオシボリが舞う 頼子の依頼で、失踪した妹の由香を追うと、知り合いのマンションで絞殺されていた。頼子は由香を自慢しており、処女のまま嫁がせる、と豪語していた。しかし本当の由香はあちらがなかなか好きな子で、その行動は目立っていた。
健康な死体 プロレスラーリッキー会津が沖縄の砂浜で背広を着たまま砂に埋まって死んでいた。犯人にされかかった薬師丸は、絵里のスーツケースにつめてもらって東京に舞い戻った。死体はなぜ背広を着ていたか。
ダブル・ビーナス 由美がザクロのように頭を割られて死んでいた。犯人を探して暮れと妹の亜美から頼まれた。びっくりした。由美と亜美はうり二つ、そっくりの双子だった。
天使に恋する 私の弟子で歌手の大山が大好きな赤沢が井の頭公園で水死体となって発見された。純情可憐限りない麻子。しかし彼女は校医の元に通って何かうってもらっている様子。そして彼女の通う吉祥寺女子高校の覚醒剤汚染。二つの事実はどう結びつく?
始発電車で行こう 京成線始発電車の網棚にレコード会社デイレクター岡野の死体。網目がしっかりくっついていた。しかし岡野がパンテイフェチで死んだときに網目のパンテイをかぶっていたから網目が残ってしまった。犯行現場をごまかすために、死体を網棚に載せたとはねえ。
乙女の祈り 夏子は本当に可愛いが、近づくたびに危機にさらされる。車が突っ込んできて一緒に歩いていた男がひき殺されたし、女を抱いたら不意に銃弾が飛んできて女が死んだ。ようするにおれが狙われている。でもその原因たるや、糞をしている現場を見られたからだって?品が無いなあ。
トウ・ヤング 娘の今日子が誘拐された、1000万円の身代金を要求されている、娘を取り返して欲しいとのドケチな富豪夫人の頼み。しかし女の子が誘拐犯と誘拐される少女の二役を演じるのは無理がありますなあ。「まる文字」で書かれた要求書が面白い。
喝采(番外編) 売れないコンビ、ドッペルとゲンゲルがどつきあい、ドッペルがゲンゲルをかなずちで殴ったところ、いつのまにか本物に摩り替えられていてゲンゲルが死んでしまった。売れない芸人が一世一代の演技で受けようとしたのだが…・。
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