新潮文庫
胡蝶蘭殺人事件
キャサリンはイチローの案内で、シンガポールの植物園に蘭を見に行く。胡愛蘭と来ていたオーキッドハンター、冬木和彦に胡蝶蘭原種探しについて説明される。日本に戻ってシンガポールで見かけた石田陽一郎が殺された。彼もまたオーキッドハンターで、琵琶湖畔の別荘にある蘭の温室で毒死、死体の胸には蘭の花が飾ってあった。鉢の下で煙草の吸い殻が発見された。高価な蘭を廻って冬木が殺したのではないか、とさえ考えられた。
キャサリンは蘭栽培に夢中になっていた。冬木の家で胡蝶蘭鑑賞パーテイが開かれた。席上堂山代議士が冬木和彦と胡蝶蘭こと田中蘭子の婚約を発表した。ところがしばらくしてその冬木が自室三階の部屋で死んでいた。部屋は暑く、蘭が咲き乱れていた。そして根元にカトレアの花の模様の指輪が落ちていた。しかし以前にたずねたことのあるキャサリンは蘭が盗まれていることに気がついた。十あった鉢が七つしかない!盗まれた三つは二階で見つかったがしおれかかっていた。鑑識の死亡推定時刻に冬木の妹も先日婚約した田中も旅行中で不在、一人のようだった。
キャサリンの隠しカメラで撮った写真から、胡蝶蘭鑑賞パーテイのおり、女優の花山ユリと冬木の妹がカトレアの花の模様の指輪をしていたことが分かった。たまたまサイズが違ったため、指にはめさせて確認したところ、現場に落ちていたのは花山のものと分かったが、彼女は自室マンションから墜落死した。しかしキャサリンは彼女は、犯人に仕立て上げられ、殺されたと見破る。
すると真犯人は誰になるのだろうか。キャサリンは蘭は低温にしてある時間経つと一斉に咲くことから、冬木は死亡推定時刻よりもかなり前に殺され、部屋にはクーラーがつけ放しになっていた。だからアリバイのあるものの方がかえってあやしい。そして石田殺害の現場にあった吸い殻とあわせて、蘭について無知なものの犯行と考えた。
犯行をオーキッドハンターに見せるためのめくらまし殺人、指輪の謎、クーラーによる死亡推定時刻のごまかしなど、多くのトリックを含め、さらに蘭についての蘊蓄まで入ってなかなか読者サービスの行き届いた?作品である。キャサリンを軸にしたイチロー、冬木の動きも若々しく悪くない。ただ、少しプロットに引きづられて、話をいそいで書きすぎている感じがする。わかりにくく何度もページをひっくり返した。
宵桜殺人事件
キャサリンとイチローは円山公園に夜桜見物としゃれ込むが桜の花びらに覆われた女性の死体を発見!彼女の手のハンカチの中にはマジックで文字の書かれた桜の花びらが六枚。か・さ・ま・こ・た・お。犯人を示すダイイングメッセージらしいが、順序が分からない。彼女は尾高鮎子、資産家尾高雅文の亡くなった二番目の妻の一人娘だ。今、雅文は死の床にあり、遺産相続問題がややこしい。これにからむ殺人らしいがアナグラムのあてはまる人物は大勢。三番目の妻尾高正子、姪の尾高真砂子、半分当てはまる甥の岡田、女中の定岡こま等々。当てはまりそうにないのは愛人となした子の酒井田真央、一番目の妻との子尾高隆夫。しかし六枚の花びらの文字には別の解釈もあった。
「燃えた花嫁」でダイイングメッセージONISIが実は別の読み方があった、という話があるがあれと似ている。
001019