国境の女            夏樹 静子


徳間文庫

比較的裕福な恵まれた環境で育った奈緒子は、女子大を卒業した後、2年前中堅商社名東商会に勤める4歳年上の明月達夫と見合い結婚した。まもなく夫は新しく開設されたサンデイエゴ支店に単身赴任し、まもなく帰国することになっている。
ところが秋月は市内の公園で刺殺死体となって見つかった。彼女は親友で麹町でスナック「わびすけ」を経営する総子の見送りを受けて取る物もとりあえず駆けつける。
明月と見合いした頃、実は奈穂子は、総子の兄で明月を紹介してくれた小磯のことも気にかけていた。一緒に奥多摩の陶芸家のもとを訪れた事もある。しかし彼は37歳で歳が離れていた上、会社で四万温泉に旅行に行ったおり、河に落ち、亡くなってしまった。その結果周囲の勧めもあって明月と結婚したのだった。
サンデイエゴでは久米が対応してくれたが、夫は上長の滝との関係で悩んでいたという。名東商会では最近権力争いが起こり、滝はその巻き添えで冷や飯を食うことになったが、そのうっぷんを明月にむけていたらしい。メキシコ国境にあるテイワナに支店を開設し、そこに追い出してしまおうと画策していたという。
テイワナの先にあるフラクシメントでメキシコ女の刺殺死体が発見された。サンデイエゴ警察署が捜査に向かうが、現場に名東商会の電話番号を書いた紙片が落ちていた事から、にわかに先の事件との関連が考えられ始めた。彼女の元に日本人とアメリカの若い男二人が通っていたという。警察は最初日本人が明月ではないかと疑うが、現場の証拠からどうも違う。アメリカの青年も分かったが、殺人にはアリバイがあった。一見アリバイがあるように見えるが、小磯が犯人とは考えられないか?
一方で奈緒子は明月に女がいることを知らされ、国境近くの、町に住むウオー・ブライド、ユキコを訪ね、夫の隠れた一面を知る。さらに夫のもとにあった一枚の日本髪の女に着目、帰国した後四万温泉を訪ね、小磯の死にまつわる真実を知る。こうして夫の隠された一面が次々に明らかになって行く…・・。

アメリカ・メキシコ国境を舞台にした殺人事件、それを通して夫の隠された一面を発掘して行く、という設定は悪くは無いが、今一歩切り込み不足のような気がした。主人公明月奈緒子のスタイルがどうも煮え切らない。明月との結婚は最初から間違っていた、とすればどこにそれがあったのか、それを奈緒子はどう感じ悩んでいるのか、そこが弱いような気がする。また朝鮮戦争、ヴェトナム戦争でアメリカに渡った戦争花嫁が不幸な結果に終わった場合も多い、とあるが、ユキコについてそれ以上のつっこみも不足の感じがする。ただサンデイエゴ、テイワナを中心とする国境の描写は楽しめた。
(1983)
010522